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なんだろう。昔は全然平気だったのにな。でもそう言えば目の前で着替えたりとかそーゆーのはなんとなくなかったな。やっぱり気を使ってたのかな、みっちゃん。
お風呂場なのになんだか乾ききっている。ホントにお湯出るかな。でもいいや、ちょっと火照ったし水でもいいから浴びよう。
シャワーは最初少し水が出たくらいで、正常に機能した。
一人の時間が今ようやく出来た。ちょっとだけ冷えてシャワーで流してなんとなくすっきりした。
やっぱり見え方が違うな。昔よりも知ったことが増えたからと言うのもあるけど果たして昔も同じ情報量だったとしたらどうだったのかな。
多分、それでも違うんじゃないかなって気がする。
私はあの頃はただ二人が良い人でしかなくて。大好きだった。それは今だって全然変わらないけど。
今一緒に住んだらどうなるんだろう。私は女で二人は異性で。年齢もお互い、あの頃より重ねてしまって、昔よりも良いとこと悪いとこどちらも知っている。
お互いのことを変に意識して気を使って、あの頃よりもより複雑に思いやって、それが良い方向に転ぶか、悪い方向に転ぶか。
前回のお別れだって果たして良いものだったのかわからないけど。あれでもしもみっちゃんもマリちゃんも凄く心が痛かったなら。
私たちはみんな、どうしてこんなにヘタクソなんだろう。
そう考えたらきりがなくなってきた。あぁ、やめよう。過去を遡れば遡るほど前に進めなくなる気がする。今更過ぎたことなんだ。
でももし、次があるなら?前回のを生かさねばならないんだ。
そう考えてふと、マリちゃんはずっと辛くないのかなと思った。まだ確信はない、だけど多分、マリちゃんは、みっちゃんのことを離したくないんじゃないか。その思いはもしかすると、言ってはならないものなんだとしたら。
それを抱えながらこんな長い間隣にずっといるなんて、実はものすごく辛かったし今でも辛いんじゃないかな。
あくまで、勝手な想像でしかないけど。
友達のままでいたい、そう思った私と私の元カレのあの思いなんかよりもずっと、強い思いなんじゃないかと思ったらホントに叫びそうになった。さっさと髪の毛と体を洗って出た。
身体を拭いて寝巻きを着て部屋リビングの前に立つと、二人の笑い声と話し声が聞こえる。変わったのは私だけなんだろうか。
ドアを開けると、二人ともわりと飲んだのか、少し酔っぱらってるように見えた。
「お風呂ありがとう」
「おぅ。じゃぁ真里、俺先シャワー浴びてくるわ」
「おう。寝るなよ」
開いた首筋がホントに綺麗だ。すれ違い様にみっちゃんはその血管が透けた大きな手で私の頭をわしゃわしゃと撫でてお風呂場へ消えた。
取り敢えずマリちゃんの隣が開いたので座る。マリちゃんはタバコを吸っていた。
マリちゃんの指も綺麗だなぁ。長くて。
じっと見てると、なんだか居心地悪そうに「ごめん」と言って消そうとしたので、「違うよ!」と否定。
「マリちゃん、指綺麗だなぁと思ってさ」
「そう?まぁよく言われるけどねー」
ふとマリちゃんはタバコの火を消し、みっちゃんが持って帰って来てからその辺にぞんざいに起きっぱにしていた鞄を引っ張り、中身を出した。さっきの制服だ。
「あいつ、このままだと忘れるな」
そう言って立ち上がり、ふと部屋を出ていった。少ししてまた戻ってくる。
「洗濯機ぶちこんできたわ」
「なんかお母さんみたい」
「ホント手のかかる息子よね」
と言って今度は押し入れの中を覗き始めた。そして、布団を一式取り出す。
「あー、一応干しといてくれたのかこれ」
テーブルの横にテキトーに敷いた。
ふとお酒の瓶を見て、マリちゃんは溜め息を吐いた。
「…小夜紅茶飲む?なんならスポドリもあったけど」
「熱いからスポーツドリンク飲もうかな」
「よっしゃ。減らしてしまえ」
そう言うとマリちゃんはコップにスポーツドリンクを注いで出してくれた。ようやく座ってマリちゃんはお酒を飲む。
「まったくさ…何が美味いんだかね」
「ん?」
「小夜酒飲まないもんな。酒をスポドリで割って飲むの。ぜってぇ美味くないのにな」
「でもそれなら私も飲めるかな?」
「いや、絶対真似すんなよ。間違うと死ぬからね」
「そうなの!?」
「スポドリってさ、吸収率良いからすぐ酒回るんだよ。なんならいつも以上に回るわけ。それをガバガバ飲んだらアル中になってぶっ倒れるよ下手すりゃ。肝臓にも負担かかるし。ただ身体を悪くするだけだ」
「なるほど」
ちょっと、いやかなり怖いなそれは。お父さんのチューハイ一口貰ったときちょっときたもんなー。
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