12
次の日、みっちゃんが誰よりも早く起きて朝ご飯を作ってくれた。
「あんまり家に食材がありませんでした」
ご飯と味噌汁と玉子焼き(これがとても上手 )とウインナーだった。
「真里、起きろ」
「んー…朝?」
「そう朝。飯作った。早く起きろ」
マリちゃんがうとうとしてると、みっちゃんが手をマリちゃんの前でパンっと鳴らした。ビックリしてマリちゃんが起き上がるのを絶妙なタイミングでかわす。
ビックリするマリちゃんを見てみっちゃんは堪えるように笑い、座った。すごく不服そうな顔をしてマリちゃんはテーブルについた。
みっちゃんと私は昔みたいに手をついて、「いただきます」と言って食べ始めた。それを見てマリちゃんも、「…いただきます…」と言って食べ始めた。
「小夜おはよう…」
「おはようー」
「光也さん、ちょっとひどい」
「起きないんだもん」
「うん、それはごめんだけどね」
「そだ!昨日マリちゃんに行ったんだけどさ、私紫陽花通り見たい!」
「あー、丁度時期か。え、あんなとこでいいの?」
「うん!」
「それどこ?」
「三人で住んでたとこの近く。スーパー行くときの細い路地あったじゃん?あそこ真里が来たときにはもう枯れてたけど、この時期だと紫陽花がぶわーって咲いてんだよ」
「あぁ、あの草か!
え?あそこでいいの?」
「うん。だって思い出だもーん」
「じゃぁさじゃあさ。
あそこ見て、したら次紫陽花咲きまくってる公園行ったらよくね?新たな思いで作りに」
「あ、いいね!」
ウインナー、お箸で取ったらカニさんウインナーだった。これ、一人で起きて一人で作ったのかな。
「みっちゃん、これカニさん?」
「そうそう」
「俺のウサギ。ウサギってどうやって作るの?」
「真ん中にパスタぶっ刺す」
「てかこれ光也さんが作ったの?あ、これなに?」
「くらげ」
「なにこのクオリティ。え、こっちは?」
「箸でさすな行儀悪いなぁ。それクジラ」
「すごいねみっちゃん。あ、これわかんない」
「犬」
突然マリちゃんが、笑い始めた。
「これさ、もしかして一人でずーっとやってたわけ?」
「そうだよ」
「なにそれ!メンタル強っ」
「意外と楽しかった」
そこからマリちゃんと私は、「これタコ」「これカニだ」とか言いながらウインナーばっかり食べていた。気付いたらなくなっていた。よくよく見ると卵焼きはみっちゃんが食べた二切れだけしか減っていない。
「あれ、ウインナーなくなってない?」
「ごめん」
「夢中になっちゃった」
「俺タコとくらげ1個づつしか食ってねぇよ!」
「うん、ホントごめん。玉子焼き美味いな」
「ついでみたいに言いやがって」
「いや普通に綺麗だって!なぁ?」
「うん、私玉子焼き丸められないもん!」
「え、」
「それ別問題かもしれない…あれ、小夜出来なかったっけ」
「なんだかんだで昔からみっちゃんかマリちゃんがやってた」
「特訓するか。俺はなんならフライパン振って丸められるよ」
「なにそれ」
マリちゃんの気合いがなんか入ってしまった。流石は料理人。
「女の子の武器だぜ玉子焼き。俺弁当まず玉子焼き見ちゃうもん。砂糖派だったらチャンスなしだね」
「光也さんわかってないな。砂糖玉子焼きはね、焦がさないタイミングと火加減で料理の良し悪しがわかるんだよ。ダシ系は大体焦げないからよっぽどのクソ以外」
「でも嫌い。味が気持ち悪い。砂糖ならでもね、ちょっと焦げてるくらいの方がかわいいわぶっちゃけ。てか見ればね、砂糖ありかなしかわかるしね。焦げてたら入ってるんだよ砂糖」
そこから二人の玉子焼き&女の子議論が始まった。なんだろうこのカオスな状況。ちょっと入り込むの面倒臭そうだな。そう思ってテレビをつけたらちょうどテレビも玉子焼きのアレンジレシピを三分クッキングみたいにやっていた。
「あ」
「砂糖入れてるし」
「てか焼いてないじゃん邪道だなぁさすがタレント。だけど俺わりとこの男好みだわ」
論点がズレてきてる。こうなったらもう話に入らないのが一番いい。
「確かにかっこいいけど俺こいつ嫌いだわ。いかにも顔売りじゃん」
とか言いながらみっちゃんはウインナーと自分の食器をまとめて流しに持ってってしまった。やっぱりあんまり食べないんだなぁ。
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