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みっちゃんを見回して探してみたけど居なくて。車のとこにいるかな、と向かおうと思ったが、後ろから肩をがっちり掴まれた。
振り向くとマリちゃんが方耳にケータイを当てて前を見ている。しかし、舌打ちしてケータイをポケットに戻した。
「電源オフってんな…」
「マリちゃん…」
「…もうなんも出来ないよ。取り敢えず帰ろう。明日言ってやろう」
「…なんて?」
「バカって」
「マリちゃん、それは私が言うからね」
「ん?」
「私がみっちゃんにバカって言う」
マリちゃんはなにも言わずに歩き出した。私もそれについて行く。
「マリちゃん、送ってってよ」
「…うん」
二人で車まで歩いた。無言だった。だんだんみっちゃんに腹が立ってきたけど、物凄く悲しくもなってきた。だけどマリちゃんの横顔を見たらなんだか違うものも浮いてくる気がして。
車に乗って一言、「なんなんだよっ…」と言ってハンドルを叩いたら一瞬クラクションが鳴った。
「うまくいかねぇな。わかってるよお節介だなんてさ」
「うん」
「自己満足だけ、ホント。わかってるよ。だから俺はいたいからいるんだよ。わかってるよ、邪魔なことくらい。だったら捨ててくれよ」
「マリちゃんのバカ」
「あ?」
「違うよ、マリちゃんもみっちゃんもお互いの気持ちをわかってない」
「なんだよ…」
「みっちゃんもマリちゃんのこと考えてくれてるのに。マリちゃんだってこんなにみっちゃんのこと考えてるのに。なんで最終的には自分が悪いってなっちゃうの?」
「…別にあいつのことなんて考えられて…。
あーもう!考えてるよ!クッソ今どこにいるんだよ!そう思うけど…思うけどさ、例えば!
あの女多分おかしいだろ明らかに、だからまた絶対なんか嫌なこと起きるんじゃないかとか、少なくてもあの人とは合っていないから付き合わない方がいいだろうな、また病むんだろうなとか思うけどさ、あんだけ完全拒絶されたらね、そっかって引き下がるしかないよ!」
「うん」
「もしも付き合わなかったとしても何かありそうで怖いじゃん。実際前にもトラブルはあったんだし。どうせなら歳も歳だし、安定して欲しいよ。
でもこれって表面上なんだよ。どっかにさ、…まだ一緒にいたいから、だから付き合わないで欲しいなとか思う自分もいるわけだよ。会えるよ?きっと。だけど今を変えたくないなって少しくらい思っちゃうわけだよ」
「うん…マリちゃん、取り敢えず帰ろう。
ごめんね、私何も出来てない。二人の話を聞いても何も出来てないの」
なんでこんなに二人ともすれ違ってるんだろう。なんでなのに柏原さんは、こんな私に二人を任せたんだろう。私よりもずっと、二人と長くいたはずなのに。
マリちゃんは車を発進させた。しばらくして、ポツンと「ごめんな小夜」と言った。
「愚痴ばっかだな。お前も今日くらい愚痴なんてあったのにな」
「いいよ。聞けてよかったよ、マリちゃん」
「言ったらスッキリした。腹立ってきた。
何自棄になってんだよな、あの野郎。ガキじゃあるまいし。そんなになるなら実家帰ればいいじゃん」
「みっちゃんのこと私よく知らないな。あの人全然わかんない。考えると余計にわかんない。なんか訳ありってことしかわかんない」
「実家とは昔から疎遠なんだよ。考えてみれば出会ってから、例えば実家に帰省しますとかそんなの一切なかったんだよね」
やっぱりそれで自棄になってるのかな。
「でもみっちゃん多分…」
「うん。家嫌いなんだよね。そこが意味わかんねぇんだよな。
やっぱりどんなんでも辛いのかな」
「うーん…まぁ帰らなかったんじゃそうなのかな…」
「こんなこと聞いたら悪いかも…だけど。
小夜だったらどう?」
「え?」
あぁ、お母さんのことか。
「何とも思わないかも。あー、死んでたら少しくらいは、死んだんだーって思うけど…倒れた、もう死ぬよって状況だとどっちだろう」
「うん、だよなぁ」
わからない。人の生き死になんてホントに。
****
まなみちゃんがシャワーを浴びている間にほどよく熱した頭が急速に冷めて自分がより嫌になった。
何してるんだろ。
なんでこんなことしてるんだろって考え直したら、自棄になった以外の何物でもない。
タバコを吸っているとバスローブを纏ったまなみちゃんが登場。あまり見ないようにする。
「お風呂、空いたよ?」
「うん、ありがと」
マジで何してんだ俺。
「どうしたの?具合悪いの?」
とか言って隣に座られてすっげーべたべたされるのが大変不愉快。
いや、確かに俺が全面的に悪いけどね、お前も結構クレイジーじゃないかなまなみちゃん。まぁクレイジーなのわかってて連れ込んじゃったけど。
誰でもよかったにしちゃぁ、かなりやっちまったんじゃないかなこれ。
タバコ吸い終わってないけどいいや、離れよう、風呂入ろう。
と思ったら急に抱きついてきて。
「もうちょっとこうしててもいい?」
もうちょっとも何もないでしょ。
「うん、いいよ」
あー、考えたくねぇ。
でもいいや、俺が悪い。今日くらいは恋しよう。そのほうが、ただ欲望と本能に逃げた方が楽だ。
「どうしてさ、あの公園に俺がいるって知ってたの?」
「え?たまたまよ?」
そんなわけない。どこの誰だか知らないがランチからわりと時間は経っていたのに。
「そっか」
でも考えたくないからもーいいや。
首筋辺りに吐息がかかって少しビクッとした。かと思えば滑った感覚。
「…足りなかった?」
「まだまだ全然」
そう言って上に乗られてマジでビビる。マジか、コイツ性欲ハンパねぇ。
でもさ、いいよ。だって。
「誰でもいいんでしょ、まなみちゃんもさ」
それには答えないでまた脱ぎ始めた。早く終わらそう。もうそれでいいや。
一瞬でも彼女の振りしてくれただけで別にいいや。こいつもこいつで罪悪感を感じる相手じゃない。お互いにクズ同士、あとは快楽だけでいい。お前なんて、真里に嘘吐く為の材料でしかないんだよ。
どんなに求めてもなにも届かなくたっていい。どうせそこには何も無いから。
取り敢えず、頭が痛い。
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