どうだってよくて


「その血管は青いんだから、血は青なのかな?」

 と言った少年に彼は「試してみるか」と嘯いた。
 子供は至極淡々言う彼に何を思うことも出来なかった。

「今日の空は白いんだから、空って本当は何色なの?」

 と言った少女を彼は「どうだろうね」と促した。
 子供は平々凡々と眺める彼を次の瞬間には忘れてしまう。

 彼が何を眺め何を聴いているのかを問う人が居るとすれば、もしかするとそれは大人なのかもしれない。

「人でなしが言うことに耳を貸しても甚だ無意味だ」
「君一人居ようが居まいが誰にも害、益もないことだよ」

 風が吹くのが心地いい。
 聴こえる、遠くの水の音がささやかに胸に流れるようで一筋痛む。君はどこだ、ここはどこだと白紙に赤で描かれた純正が焼き付くようで、息が苦しい。

 どうだってよくて、窓の外は。
 眺めるのに霞む程度なら綺麗なような気がしてしまう。
 踞って、耳を塞いで。
 殺めるのに悼む程度でも醜悪だとわかった気になる。

 本当は全てが遠くて掴めないから、誰か、誰か、わからなくていい、見なくていい、聴かなくていい、感じなくていい、なんでもいい、消えてしまいたい、その為に息を荒げたいだけで。

 自分勝手にわかりきっている矛先が他人に行かないのはそこで待っているだけだからだけど、寒くて頭痛がしてしまうから。

 目に見えないから探さないで欲しい、息を止めておくから。誰か、誰か、知らなくていい、気付かないで、考えないで、殺さないで、なんでもいい、生きていたい、目を凝らしただけで。

 「血管は青」だと言い張った昔を思い出した。赤の成分がないザリガニが流行ったからだろうか。
 「空は白い」と気付いたあの日を思い出した。映し鏡の青い洞窟が発見されたからだろうか。

 どうだっていい。

 ここには透明な空気が浮遊している。誰かの明日と僕の今日。
 近くて遠い場所を巡って。世界の終わりで眠ってしまえ。

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