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「明日プラネタリウム持ってくるわ」

 おっさんが閉店後、皆でまったりしている時にそう言った。

 確かに、最早クリスマス企画は決まっているのだからプラネタリウムを固めてしまった方がいいような気がする。

 しかし、なんでそんなにプラネタリウムやりたいのかな。てか、なんで流星群とクリスマスなのかなぁ。さっき日にちズレてたこともわかったはずなのに。

「俺さあ」

 おっさんはタバコに火をつけ、バーボンを飲みながらすごく楽しそうに話してきた。

 あれ、最近タバコ止めてたのに。しかも銘柄が赤マルからラキストに様変わりしてる。

「あれ、タバコやめませんでした?」
「あぁ…うん。復活。やっぱねー、口が寂しくなるんだよー。いままでやめたことなかったから知らんかったけど結構イライラするってかくらくらするね」
「タールの問題じゃなくて?」
「タールはね、減った。おかげで吸いすぎてタバコ代がハンパない」

 すっげぇ身体に悪そうだな。そういえば最近なんか草食になった気がするもんな。歳のせいかもしれないけど。

 しばらくやめていたせいか一口吸ってこめかみ辺りを掌で叩いていた。ちょっとそれわかるぞ。

「なんでそんなに無理にタバコって吸うの?美味しい?」

 あぁ、多感な時期特有の疑問だな。これは教育せねば。

「美味しくない。むしろ不味い」
「じゃぁなんで吸うの?」
「んー?きっかけってなんだろう。大人の見よう見まねとかから始まって気付いたら中毒性にやられてるんじゃないかな」
「ほー」
「男はとくにね、早く歳を食いたがるからね最初なんて」
「女の人は嫌がるのに?」
「女って歳食うと振り向かれなくなるけど男ってある程度歳食ってないと見てもらえないとこあるからなー」
「そーゆーもんなの?」
「社会に出るとな」

 無駄に意気がるというか肩に力を入れる方はどちらかと言えば男だ。だが、堕落しやすいのも何故か男のような気がする。

 俺もおっさんも真里も。なんだかんだで一番小夜が強い気がするな。

 おっさんはまたタバコに火をつけた。そんなに吸うと本気で身体に悪い気がするけどな。

「それでさ、俺ね、クリスマスと言えば思い出すのよ。ここ開いてすぐのときのやつ」
「あれは忙しかった」
「なんせ今回みたいに思い付きで言いやがったからな」
「あん時さ、光也さ、お前が小さいときにしてた遊びの話覚えてる?」

 え、なんだろう。全然覚えてない。

「あぁ、なるほど。それでクリスマス企画とコラボしてるんですね」

 え、何?全然わかんねぇ。

「光也さん絶対覚えてないなその顔。
あれだよ。ライトに黒い紙を敷いて穴開けてプラネタリウム作ったってやつ」
「あぁ…めっちゃバカにされたやつ」
「何それ!楽しそう!」

 あれ、小夜には意外と好評だ。

「それいい!やろうやろう!」
「ね?俺それ店でやりたいなって思ったわけよ」
「あー…なるほどね」
「はいはーい!提案!
 ふたご座だけ穴空けない?で、お客さんに他は空けてもらうの!そしたらさ、オリジナルの星空が出来るよ!」

 柏原氏、暫し考え、凄く真面目に、「うん、やっぱ小夜ちゃんいいな」と深く頷いた。

「誰かとそうやって創るの、楽しいもんな…。
 俺もね、あれ作ってみたとき楽しかったんだ。お前みたいに星とか知らないから調べてさ、ちょっと形が歪になっちゃったりして。だけど…やっと完成してさ、二人で見たとき、それまで喧嘩しながら作ってたんだけどさ、なんか二人して笑っちゃってさ」

 そっか。そう言えばあの時、|静《しずか》さんにサプライズするとか言ってたな。
 染々と言うおっさんを見て、溜め息しか出てこなかった。

「仕方ないなぁ」

 なんか、「なんだよぅ!」とか返ってくるかなとか思ったら、予想に反しておっさんが、さっきまで見せなかった、ちょっと哀愁ある微笑みで見てきたから。
 やっぱりまだ立ち直ってないんだな。

「小夜さ、今年クリスマス友達と過ごすの?」
「え?ううん。考えてなかったー」
「そっか。まぁ俺らもだけどね。おっさんは?」
「なんか今年は積極的だなぁ。どうした光也」
「まぁほら、今年は小夜も家にいるからさ。よく考えたら小夜とはこーゆー冬イベントって初めてなんだよね」
「あ、そういえばそうだね」
「小夜になんか予定ないならさ、今年は定休日だし、おっさん家にでも押し掛けるかと今思った」
「うぉぉ、マジか」
「片付けといて」

 たまにはそーゆーのもいいだろう。この人の家とか未知だし。

「…うん、わかった」

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