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あまりに張り切りすぎたせいか翌朝、久しぶりに腰痛に悩まされて。腰に手を当てながら働いていると、「ぎっくり腰?」とか半笑いで光也にバカにされた。
「うっせぇ。歳だ」
とか言って軽く殴ろうとしても敵わず。痛ぇ。腰も股関節も痛い。なんなの?俺そこまで歳食ってるかな。
「今日歓迎会だけどあんた大丈夫?」
とか言って楽しそうに腰をぶっ叩く光也がホント小憎らしい。
「痛ぇってば!てめぇ…ちょっとあれ取れや、腰痛いんだよ!」
光也に言うが、すかさず真里が取ってくれた。
「何でそんな?」
「運動しすぎた」
性的なね。
「おじいちゃんなんだから無茶しちゃダメだよ」
心配してんだかふざけてんだか分からないような口調で光也に言われた。
「光也それ今、全古株敵に回したからな。俺がおじいちゃんなら今の店長なんか棺桶片足だからな。よーく言っといてやるよ」
「だめ、あれリアル」
言っていて確かにと思った。
しかし、彼は御年75には見えないようなハイパーなじじいである。いい加減出世しろよとか思うが彼は出世に興味がないようで。まぁチェーンと言っても小規模でほぼ個人経営のようなものだから仕方ないのだけど。
「柏原さん、そんな歳いってます?」
「このおっさん意外に歳食ってるよ。俺らの倍ぐらい多分生きてるよ」
「倍は言い過ぎ。いい加減軽口が過ぎるぞ、お前」
それからの真里のなんだか探るような目というか態度が非常にやりにくくて。思わず実年齢を暴露したら、「それ、倍ですから」とか言われた。軽くショックだった。
歓迎会があることを昨日言い忘れていたので取り敢えず静にメールした。一言、了解。とだけ返信が来た。
そして歓迎会は大いに盛り上がった。厄介だったのは光也の酒癖の悪さだった。
新人ほとんど返したあとに我慢の限界が来たらしく潰れた。丁度|山田《やまだ》という、ホールの奴の家で飲み直すことになったので連れて行った。真里がおぶって。
「帰る!って言ってふらふらだったから連れてきちゃったけど、こいつもしかして返した方がよかったかな」
「大丈夫大丈夫。こんなバカは転がしとけばそのうち起きるから」
「てかぐっすりなんすけど…」
「志摩くん珍しいね…」
山田はなんだかんだで光也と同い年だからか、大人しいタイプだがたまに光也と飲みに行っている。
しかしこいつももうじき卒業もあってあまり店にいなくなるだろう。
「山田はもうそろそろあんまり入れなくなるのかー」
「そうですねぇ」
「ちゃんと就職決めろよー」
「はい」
「山田さん4年?」
「うん。志摩くんと何気に同期なんだよ」
「そうなんだ…。山田さんの方がしっかりしてる」
「こんな姿が全部じゃないからね、志摩くん結構、俺なんかよりはるかにしっかりしてるからね。よく相談に乗ってもらう側だし俺は」
「へぇ…」
そうだったんだ。へぇ、この酒でぶっ潰れて新人におんぶされてるこいつがねぇ。
光也の入った頃からを思い返してみれば確かにこいつは、なんだかんだで嫌われないタイプではあるよなぁ。
「まぁたまに志摩くんボーッとしてるけどね」
多分嫌われないのは、心を開くタイプじゃないからだな。
俺だって薬の件は、静の行動を見ててなんとなく当てはまったから聞いてみたらビンゴだっただけだからな。
「つうかこいつ軽いなぁ…何食って生きてんのかな」
「多分なんも食ってない」
食ってもさっき全部吐いたんだろうしな。
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