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どうやら始まるらしい、という事で俺もテキーラコーク買って急遽参戦。
もう一気。ゴミとか知らねぇ。
帰っちゃった人ドンマイドンマイ。丁度よく空いてた場所が2列目。無理矢理入って待つ。
間もなくしてギターが先に登場。
クールに、特ににこりともせず、しかしボーカルもやっていた、両手を合わせて拝むあれ、それだけやって左側に立ち、メンバーを待つように今来た上手をぼんやり見つめる。
客席のどっかから「げんちゃぁぁん!いぇぁ!」と飛ぶも、ギターは声を見もせずに手だけを振る。
次にベースが優しい笑顔でだるーく片手を振って登場。もう片手にはどう見ても売店のドリンク。
「ふみとー!」と客席。ベースは客席を見てにやにやともにこにこともつかない笑顔で手を振って。そのままギターにドリンクを渡して何か耳打ちすると、漸くギターが笑い、ピリピリした空気がなくなった。
一度、ギターは受け取ったドリンク(色的にカシス系)を床に起き、「ごめんね、今来るからね」と一言客席に投げる。
直後、ドラムが「はーい!お届けもんでーす」と言いながら、やっぱりぐったりしているあまちゃんをおぶって登場。
あまちゃん、虚ろな目で売店のドリンク(これが恐らくテキーラコーク)を怠く飲み、身を起こせばステージに降ろされ、顔面蒼白ながら、「うぇーい…」と真ん中に立ち、ふらっふらしながらギターを肩に下げた。
「あまちゃーん!」
「よっ!」
とか言うヤジに対し、やはりあの両手合わせてお辞儀をマイクの前でふにゃふにゃしながらやっている。あげた顔が大丈夫か、放送禁止級にラリってるぞと思えば、メンバー同士が顔を見合わせ、あまちゃんが一言言えば、頷いて楽器をそれぞれ構えた。
やっぱハコってこれだ。目の前の事情が生々しいよ。
「どもー、ありあとーございやす。
時間過ぎてっけど、ヤっていーってさ!」
いぇぁ!
客席が沸く。
それからあまちゃーん、げんちゃーん、はげー、ふみとーと声が沸く。メンバーにやにや。答えないのか。しかし一言、「げんちゃん抱いてー!」のファンの声に、当のげんちゃんことサポートギター、凄くにやけながらあまちゃんと目を合わせ一言、「せぇ、ブス!」と、何?さっきまでのクールさどうしたのという具合に言い捨てた。
ちょっとわかる。あーゆーヤジがウザイのは他のファンも一緒。
「あひゃひゃひゃひゃ、彼は俺のせーで機嫌が悪いんでーす。げんちゃーん!あい、ごめーん」
「…あまちゃんうぜぇなぁ、テキーラ足りてねぇんじゃね?カシスソーダいる?」
「いるいる。いーね」
ベースをちらっと見るげんちゃん、首を振っている。
仕方なしとばかりにドラムは叩き始めた。
笑いながらも一音、げんちゃんが入れたそれに、あまちゃんはだいぶゲスい笑顔で笑い、二人は向かい合って音を合わせて前奏が始まった。途中で入る擦れたベースが神掛かっている。
空を裂くような鋭いサイドギター。1弦2フレッドをそんな調子のうぃぃんなエフェクターとかなんなの凄いよ。
そしてあまちゃんのブレない基本は安定感がある、しかし高度なバランスのコード。腹の底に溜まるようなベース、心臓をぶっ叩くドラム。最高だ。このバンドとてもキている。
なにか英語の歌詞を唄う彼が、前半戦はどうしたのと言うくらいになんだか色っぽい。なんだろうかこの違い。なんて唄ってるんだろう、「everything other なんちゃら」「l hate なんちゃら」としっとりと唄ったあたりで突然のアップチューン。
そしてやっぱりお得意のハイテンション。最早躁病レベル。てか一人で弾かずに舞台歩き回ってなんか煽ってんだかわかんないなんかハイテンショントーク。多分歌詞じゃない。最早引くわ。
「えぃ、へぃ!頭来て?はい、ここに来て?はい、事務所のこーはいぶん殴る、へい!」
いやじゃらーんじゃなくて。
「あーいま、ろんりねす、たーいだろんだろ、あぁ、もー、なんかさぁ、あーしたやるきねぇ
けど死ねねぇし、やることなぁいし、けぇっきょくこんやー、しーぬほどじゃんきー!あーいのーしらねぇ、へぃあ!」
けどなんだろこいつ。
すげぇ、なんかすげぇなぁ。
圧倒されちゃう。もう心が今床に押し倒された感覚。俺ってなんだろ。なんでこいつに興味持ったんだろ。
「いいから働けんなことできねぇ、
夢なら今さらゴミ箱行きだぃ!」
すげぇ、夢も希望も歌っちゃくれない、どっちかっていうとジャンクバンドのクセにこいつなんだろ。なんでこんなエキセントリックで、ハッピーに感じんだろ。センスもねぇしトイレで吐いてるし多分どうしようもねぇ、ガチなゲス極めてる系なのに。
揺れる髪が痛くスローモーションに見えた。パッチリとした死んでるけれども空虚なビー玉のような目と、覗く八重歯、白い肌に紅潮した頬。全てが夢のような景色に見えた。
センセーショナルなスローモーション。あぁ掠れるショタ声。甘い甘い。なんだろうこの中毒性。このチカチカしたライト。ひとえに、好き。凄く、確かに。
「きゃぁぁ!」
え、誰の声?
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