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無駄話ばかりしていて結局作戦を立てていないまま本家についてしまった。
というか。
「なんじゃこりゃ」
最早敷居を跨いで良いのかわからない、というか敷居?神社の門かよみたいな重厚感、見た目は遠目から見ても、その辺では一番デカい大きな瓦屋根?てか最早ヤクザ家かよみたいな広過ぎる家に困惑。
嫌だ俺ここ入りたくない。関係者だと思われたくない。ましてや相方、オールバック革ジャン野郎。俺が貧相すぎる本当に嫌だ。
しかし太一は、その思考で立ち止まっている俺を置いて、開け放たれている桜田門(絶対に謝らない)に何事もなく足を踏み入れ入っていき、敷地内から俺を振り返り、「どげんした」と渇を入れる。
なにこれ、てか新たな可能性が頭をよぎる。
俺実はヤクザに売られるパターンだったらどうする?まぁボロクソ軽トラ余裕で敷地前に止まってるんだけどさ。そんでもって表札も『古里』なんだけどさ。
てか本当に俺古里昴?実は新里とかじゃない?(根底から覆るどっきりを一人頭のなかで考えるくらいに入りたくない)
「昴、どげんした」
「太一、俺ここヤダ聞いてない」
「ははー、何言っとるかようわからんばい早うしてや。そいやぁ追い出されたガキのごたぁばい」
確かに惨めすぎる。
「…売らないでよ、昔の恨みとかあったら今聞くから!」
「はぁ?大丈夫?」
うん、俺大丈夫?
「あーもぅいいもぅいい!ヤケだヤケ!」
「はいはい」
一歩前進しようかと思ったら引っ張り入れられてしまった、冷や汗。
思わず「いやん」なんて言ってしまってより惨め。
太一が思わず俺を掴んでない手で口元押さえて笑ってる。
だって怖い。オールバックとヤクザ家(自分の本家)。俺どうなっちゃうの?これからちゃんと表社会で生きられるの?
「なんや、捕獲されたなんか『殺す気はなかったんたい』ん青少年のごたぁだな」
「よよよよくわかっ、わかんねぇ、例えですねそれ!」
「ええから早よせい」
「あいぃ…!」
そのまま俺は本家の引戸、と言うには頑丈な引戸の前で連行される。
大丈夫、ちゃんと防犯カメラとセキュリティ会社を確認した。クリーンかもしれない。
しかし太一はそこで一息吐き、何故かピンポンを押さずにすぅ、と肩を上下させて息を吸ってから「ごめんくだしゃぁぁぁい!」と大声でシャウトした。
正直チビるかと思った。いやチビったかもしれない。最早生理的に泣きそう。
ちょっとの間から、静かにカラカラカラと引戸が開いた。
一瞬見えなかったが、視点を下にずらせば、小さな老人がいた。
多分、着物的に女性物っぽいが、なんか色合いが灰色?何色?ベージュ?みたいな色で正直あとは顔がくしゃくしゃだしよくわかんない。どっちだろうと思っていたら、太一を睨み付け、「どなたやか」と言った。
声も正直わからなかった。どっちだこの老人。
まぁ田舎のなんかでかい家って多分、女の人がこーゆーとき対応するよね。「誰じゃ!」とかじゃないしね。多分女の人だよね。
「…古里敏郎の第一子、太一にございます。こちらが敏郎の弟、連次郎さんのご子息、私めが従兄弟の昴さんであります。
敏郎の母上、サチ子の代理としてお越し頂きました」
太一標準語っ。
そして初知りだぞレンジロウ。俺の父親そんな名前なの?
「はぁ、サチ子の。
レンジロウ…あん相続ん紙切れに書いてあったんよ人やね。
まぁよかろうもん。お入りない」
なにそれよくわかんないけど状況。
紙切れに書いてあった人ってなんだし。なにそれメモ帳かなんかだったの?だったらマジメにキレちゃうよ俺。
俺と太一はその老人に案内され、それはそれは大層ご立派なおーきな廊下を半迷路かよ、何処だよ状態で歩かされて辿り着いた和室には、老人から子供まで20人くらいが皆正座でお出でなすっていて、比率で言えば半分くらいが老人、半分くらいは中年、2人が子供だった。
つまりこれは、太一と俺が恐らくは最年少(子供を除く)になる。
皆様まぁ、お着物やらスーツやら、よそ行きの高そーなお洋服なんか着てしまいまして?俺たちみたいにオールバック革ジャンやらスキニーパンツのジャケットおしゃれ眼鏡なんかいない。ちなみに俺のは真樹が付けた俺の評価である。
真樹の中で俺は『おしゃれクソ眼鏡』らしい。
そんなに眼鏡おしゃれか?ぶっ壊したし、ただの安い針金みたいなフレームの目立たないヤツだがと思ったら、どうやら違ったらしい。
「なんか服売ってそうなんだよいちいち」
最後のいちいちの使い方や意味が凄く困る一言。どうやらファッションセンスらしいと知る。
子供ですらなんだか、なんたらお教室とか通ってそうな上品な出で立ち。
どうしようこれ。この浮き具合。
やはり皆様一瞬チラ見して俺たちを遠目で、爪先から頭頂部まで見つめて怪訝顔。
え、なにその筋合い。
「はいはい皆様、お呼びの『サチ子』さんの孫、昴がいらっしゃいましたよ」
だから何故ここにきて標準語なんだよ。太一はにやにやしながら俺を指し、ご紹介してくれた。
これはどのようなテンションでいけばいいのでしょう。
「ヨシさん、そん人は誰やか?」
俺たちの目の前にいた、いかにも気が強そうな茶髪の中年女性が静かに老人を見上げて言った。
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