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「んで」
藤嶋は妙に真面目な部分がある。
再び、朝一で美鶴の部屋に来ては「殺されるかと思いました」と、よそよそしく言うのだから美鶴も笑いそうにってしまう。
「えっ?なんやてぇ?」
「少し前に眠ったんだけど」
「うん、はい」
「俺の子種は強すぎたらしく、腹痛になったみたいだ」
「あ?」
「朝方まで絞られました」
「うわぁ…」
あの子供ホントにえげつねぇ。
美鶴の顔にすらそれが出ている。
「…おっさんはお陰でボロ雑巾のようなんで、もう今日は動けそうにない」
「…どっちがボロ雑巾なんだか」
ついに、「つか、」笑い出す美鶴に藤嶋は羞恥が勝る思いだが、大体表情に出ない。
「げっそりしすぎて誰だかわかんねーけどっ!このゲス!」
「…うるさい腹に響くなやめろよホンマに」
「うっは!ははは!」
腹を抱えて笑う美鶴に「言わなきゃよかったわ…」と藤嶋は後悔した。
「お前らおもろっ!」
「うるせぇな…」
「似た者同士やったわけねっ!」
「勘弁してくれ」
「うひゃひゃひゃひゃ!」
「お前ホンマにいっぺん死ねよ…」
ふと美鶴は爆笑をやめ「ふぅん」と、わざとらしく言った。
「ははぁ、果て場所を見つけましたか〜」
「品がねぇ、」
「わざわざ伝えにくるのが悪い」
「巻き込まれたお前が悪い」
「どやった?」
「は?」
「あん子」
そう聞かれれば「やべぇよクセになりそうだよ」ともう、この男に嘘を吐くのはよくないと白状することにする。
「まぁ、肝は座ってるわなぁ、虫も殺せん顔してなぁ、」
「侮ってた」
「せやから言うたやんこのアホ」
「…いや、まぁなんかその…却ってより怖くてな」
「あ?」
「俺忘八だわ」
「…ちょっとそないによかったん?やっちゃったん?」
「せやからそう言っとるがな」
「ははぁ、本気のやつやね。そりゃ取って食えんわ…」
そこまで言われると珍しく本格的に恥じらいが生まれ「ん、まぁ」としか返せない。
「まぁそれだけだわ、頭冷えました」
「ん、」
「沸いてたよ」
「相当な。
けどええなぁ、共食い。なぁ、ええもんめっけたんとちゃう?」
言葉は詰まるけど。
忘八、藤嶋。初めて俯いては子供のように無邪気に笑い「どうかな」と言うのだからひねくれていると美鶴は感じた。
「んなわけで、はい」
「ん、鼻血も出ぇへん話をどうも。首を枝に吊るされてこい」
「…何で知ってる」
「確かどっかであの子前言うっとったわ。百舌鳥やろ?」
「…うわぁ身震いした。怖い」
「せやから殺すは簡単なんやろ」
そう言われては「ははぁ、なるほどな…」と小言になる。
「まぁ、けどよかったやんか、余らすより」
「…そうかもねぇ」
「生き場所は確保したんね」
確かに空虚だった。
「…恐ろしい」
「それが情やねん」
「は?」
「ん、もうさっさと帰って」
追い払われては仕方なく、「世話になったな今回は」と去っていく。
大丈夫かよあの忘八。まぁ、徳も捨て素直ではあるかと、美鶴は、やはり亡き人を思い出したり、思い出さなかったりするのだった。
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