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後にはっきりした意識になり、筆談で聞きました。
一之江陽介はあの日退院し、帰国しようと試みた。
そこに飛び込む、金上嘉実失踪の話。恐らくはあの教諭でしょう。
あの鉄橋は案外、空港の近くにあり、探さなくてもなんとなく、キャリーバックだけが残されていて、その話を聞いていた一之江は勘を働かせて、空港へ向かっていたタクシーを降り、覗き込んだのだと。
僕はそれから一之江が宿泊していた、一之江のあの、知り合いの家(医者の、日本人の家だったらしい)に連れていかれ、そのままその方の手当てを受け、3日ほど昏睡状態。
あの、僕が目を覚ましたときは実は、日本だったそうで。僕の新居になったマンションでした。
昏睡状態ながら、実は一度意識を戻したらしいく。その隙に帰国し、新居のお隣にある、僕が昔通った一之江総合病院に転院。
しかし一之江が何故か、引き取る、しばらくは安静にさせると家まで用意してくれた、これが経緯だったようで。
その部屋は元々、一之江自身が住んでいた部屋でした。
つまり僕は、サンフランシスコで自殺未遂をし、起きたら昔のクラスメートと同居している。こんな状態に陥りました。
しかしまぁ、正直。
それもどうでもよく。
大学は強制退学、というか除籍。家庭の事情は、嫌というほどニュースを見て知りました。
結論、僕が予想した通り、メディアで雲隠れしなかったところは、金上嘉実(20)は、留学中に家庭問題を苦に自殺。母親が数日前に原因不明の首吊り自殺を計った模様。母親には多額の借金があった、というものでした。
掘り下げるメディアでは、母親はどうやらヤクザから多額に金を借りていた。体内からは薬物、シンナーだの覚醒剤だのが検出されており、錯乱して自殺してしまったのではないか、というものもありました。
多分、どれも案外事実なのです。何故なら僕にはまぁ、覚えがあったのですから。
金上嘉実はそのせいで家庭内で、わりと強いたげられたような、というか極貧生活を送り、「貧乏人」と学校で蔑まれ続け、田舎で、確かに近所から、「キャバクラの子」だの「あそこの子はどこか危ない」だの、大人同士で言われていたのは承知でした。恐らく金上嘉実は、ヤクザ愛人の隠し子か、何かなのでしょう。
しかしそれはもう、どうでもいいのです。
彼の家、一之江陽介と共に過ごし僕は、そんな風にそれから、家から一歩も出ずに大体を過ごしました。
その間、狂ったように空虚に彼のプレイリストを垂れ流し、頭の衝撃で一度狂った耳、突発性難聴なるものも気が付けば治りました。
彼とは他愛のない日々を過ごしました。本当にただ、映画を見て二人でボロ泣きしたり、日本のロックを聴いて楽しんだり。
「日本で夢を見ようぜ」
僕をPTSDだと、まだ医者でない彼が診断し、何故そこまで彼は僕といようとするのか、その頃にはわかりませんでした。いまだって、どうでもいいのでわかりません。
ただ彼は言います。「共鳴かもね」と。
僕は彼の寂漠やら気持ちやらなんて、やっぱりわかってやろうだとか思えなかったんです。その頃は。
何を共鳴と言うのか。彼には彼の、感慨なんて、あるんですが。僕にはいまだに察せずにいて。
恩人?違います。
彼は僕なんて、助けてくれてはいません。そんな気にも、なっていないはずで。
だからこそ、大学卒業をして研修生となった彼の気持ちは、わかりませんでした。彼も彼で、思いは、包んで殺してしまうからです。
ただただ、わかっていたのかもしれなくて。彼とは楽しいのかもしれない。しかしこれが呼吸循環かどうか。
僕が彼に彼の言葉を返品したのは、彼の様子が変だった日の事でした。
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