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「…その予想出来すぎてて怖い」
「単純にクッション買ってもらったんかもしんないっすけどね。もしくは満喫とかもありえるかなぁ」
「…頭の中でそれ想像してるのが…なんというか」
「サイコパスっすか?いやぶっちゃけ憧れたことありません?そのシチュエーション」
AVを指さす竜二に「う〜んノーコメントで」と吉田は言う。
「まぁ、きっとこうやって服は1/3くらい脱ぎで、狭い中で、…そんな男が考えそうなことって碌でもないでしょ。奥さんとヤれないことをセフレで解消、的な」
竜二は依然、まだ絶頂に達しはしない女を眺めては、初めてにやっと笑った。
「今頃伊織は狭い中、リアシートを抱き締めながらパンツ降ろされてぶち込まれながらおっぱい揉まれてたり、もしくは対面座位で男に跨がりながらがつがつ突かれてるか、動けと言われてるか…バックで苦しそうにガラスに手垢でも残していたりして、」
言っていることはえげつないくせに、一瞬竜二の口許は、まるで舌打ちでもするかのように歪み、それを隠すようにジャックを煽る。
結局それは無駄な設定なんじゃないかと吉田は逃避したくなったけど。
「はたまた普通に正常位で、狭くて汗臭い中、野郎の伸びた鼻の下見てぼんやりしてるんだろうなと思うと…っ、偉く、興奮しませんかねぇ、苦しいな、狭いな、誰かにバレるかもと、さぞスリル満点で、泣きそうになりながらねぇ、」
…確かに竜二は、興奮しているだろう。息も荒くなりながら、肩を上下し居たたまれないように酒はハイペースで減った。
「…その…。俺、誤解してたな君を」
「はぁ?」
「うぅ、そんなヤンキーみたいに」
「…すんません性分すね。バンド野郎の」
「うん……。なんというか、もう少し今時の淡白な子だと、勝手に思ったんだけど」
「…淡白?」
「…いまだって、こうして抱いた女を抱いた男、を、家に上げてAV観てるし、…俺なんてこの前ここに突然来たっていうのに」
「…まあそこは領分でしょ。仕方ないっすよね、男って穴ねぇと成り立たねぇんだから」
「…でも…月曜日の桝さんは違うようだね」
「…別に」
そこだけはやはり20代、達観し年齢よりも大人な考えだと思っていたが、なんだか安心し「…ははは、」と、失礼ながら吉田は笑ってしまった。
「…なんすか」
「いや、君も男だなぁと思って。シチュエーションもやっぱ大事じゃん。
ならはっきり言うと俺にとって君も月曜日も腹立たしいがそれが凄く切ない」
「…やっぱりね。吉田さんって、正直っすよね。そこが刺激だったのかもな。
俺とか、マス野郎とか、伊織自身だって…そういう碌でもねぇやつばっかなのに」
「俺も大方碌でもないのは話しただろ?酔った勢いからずるずるずるずる、宿泊からフリータイムみたいなくどい男で」
「…何気に根に持つ面倒な男」
「そう」
「…まぁ、そっかぁ…」
吉田はふと立ち「お茶あるかい」と冷蔵庫に向かう。
「…しかし、そんな伊織ちゃんを止めようと言う立場でも、ない、と…」
「…ですねぇ」
「それはそれで業が深いな」
「流石、言うこと違いますね」
「年の功だね。年の功から余計なことを言うけど」
「はぁ…」
出た、おっさん論。多分めんどくさい。
「君、やっぱり多分、俺なんかより伊織ちゃんのこと大好きだと自覚しても良いと思うよ。行く行くは結婚したい、でも先ずはセフレ脱却したいと思った俺なんかより」
…多分、めんどくさい。
「…は?」
「愛されてるよね伊織ちゃん」
気持ち悪いほどに吉田はニコニコしていた。
「ははっ、憎たらしくて刺したくなるほど愛されてるってやつなら俺らライバルっすよ。
じゃぁ言わせてもらうと俺は桝の後もあんたの後も伊織を抱いたことありますよ。こんな気色悪ぃこと、割り切った方がメンタル的に良いかと」
「はははは、そゆとこ若いねぇ!勢いがある。触発されてぶっ飛ばしたくなるくらい!でも、なるほどねぇ」
「やっぱ優しいっすよね吉田さん。大人の余裕と言うか。でもね、じゃぁ、若気とか同居人とかの余裕なんてない俺から言いますと、伊織はきっと踏み込まれるのが嫌なんだ。触れれば多分逃げる。だからあんた暫く禁止だと思う」
と言うか、もっと良い女、あんたには絶対いるけど。
でもあんたはあんたでだからかなぁと考える。
じゃぁ自分には、どうなんだ。理想と現実の歪み。伊織にはそれなら、誰が必要なんだ。
誰も必要がないのか…?でも、今更そんな設定、無駄なのに。
「…忠告ありがとう。それも含めて考える。でもヤリマンってことは、最早ホントは気付いて欲しい、そんなんだったら可愛いかなとか押し付けだけど。話せてよかったよ」
「あんたも大分碌でもなかったらしいっすね…」
二人で「ははは」と、酒のせいか友達のように笑えた。
じゃぁ次こそ社内セックス観ますか?とか、なんで好きなんですかあんなやつ、さあ、恋ってわからないけど地味にズレてても気遣いがいいじゃん。とか。
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