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「まぁねぇ。趣味じゃないタイプだけど音楽やらまぁ、そーゆのって性癖じゃん、癖じゃん?好みとは少し違うかなと。あ?俺今良いこと言った?ははは〜。
いやぁまぁ好きなんだよね。人も音楽もね。
うん、そんでさー、まぁまぁアレンジとか悩み中でさ。あの人声高いし、ゲンジんとこも同じ感じじゃん?どーしてる?あ?マジ?うんうんどっちも聞きたいわ。ありがと。
最初はやっぱそんな感じだったのかー。ふーん。まぁゲンジ、正直そこで開花したよねって、ははっ、偉そうかな?
そうそう声声。あー…確かにそうだなぁ。あ、でもそうなんだ、へぇ、合わせてメインにいってくれたのね…なるほど…。あ、うん確かに技術はゲンジのがあるよな。つーか仲いーな。尊重しあってんじゃんか」
何を話しているか全く伊織にはわからないが、音楽の話をしているリュージは、こうして何よりも楽しそうで、キラキラしているなぁと、伊織は座って聴いていた。音楽は性癖って凄いなーと、思いつつ。
少しそんな伊織を見たリュージは、「いやありがと、急にごめん。うん、まぁいつか…どうかな似てるから。でもまぁ、そうだね。いつかね。じゃ、サンキュな」と電話を切る。
もしかして急かしちゃったかなと伊織は思ったが、「いやさぁ、」と、リュージは嫌味なく楽しそうだった。
「同期で同い年のヤツに聞いてみたよ。似たような感じで3ピースへ入ったギターがいてさ」
「そうなの?どこ?」
「でんにじ。エレクトリックレインボーってとこなんだけどさ」
「うん」
「こいつ、ほら、グラシアのノリトさんとやってたんだよね〜。ちょっとアドバイス貰っちゃった」
「どんな?」
リュージもベッドに座り、「あ、皿サンキュ」と言いつつ、楽譜を膝の上に広げると伊織がそれを眺め始める。
「いやわかんないっしょ」とツッコむと「うんわかんない」と返ってくるので、エルボースタイルで、しかしふんわりと伊織の頭を抱えた。
「難しいなぁ、これ」
「そうなんだ」
「俺的には曽根原さんは技術まんま使って欲しいから、
あ、そいつんとこはね、ボーカルがまぁ、メインに移ったらしいんだけど、要するになんだろな、ボーカルは大人しくなったって説明したらいいのかな」
「うん」
「やっぱあの人のギター聞きたいっしょ?ファン的には」
「そうだねぇ」
「となると俺がメインかなぁ、曽根原さんは遊ぶ側のギターがいいもんな。と、なると、俺が骨組み的な感覚だから、まぁ難しいわけよ。さくっとサイド入れば装飾感あるし、楽ではないが遊べる…けど…と、まぁどっちも難しいな。曽根原さんに聞くのがいいよな、これって」
「腰を据える気満々ですな?」
伊織がキラキラしたような、楽しそうな目をして聞いてくれるのであぁ、ついつい語っちまったなと「あぁ、すまんなわからなかろう」と言えば「まぁわかんないけど」と伊織はそれでも変わらない。
「リュージの話聞くの楽しいよ。楽しそうだし」
「…そっかぁ?」
「うん。そゆの好き」
「…そっかぁ」
ふと、吉田が「縛っちゃえば」と言ったのを思い出した。
「…伊織さぁ」
「何?」
「俺束縛系なんだけど」
「そう?」
「まぁ。よく言われてたってだけだけど…」
「そうなんだ」
「重いかな?」
ふと言うリュージに伊織も、「私が言うことは重いかも」と吉田に話したのを思い出した。
「…そうでもないよリュージ。束縛系ならとっくに私縛られてるし」
「うん…まぁ、付き合うとかももう少し早かったかもな。でも先に家決めたよな」
「うん」
「あれ、言い出したの俺だし」
「そうだねぇ」
「別に不便ないならいいんだけどね。お前はなんかやりたいことある?」
「ん?」
「俺に。なんかそーゆーので」
「う〜ん…。私は自由でキラキラしててくれる側にいたいかなって感じで…」
「あーそれ超なんか、話戻るけどわかる。曽根原さん…てかグラシアそれかも。まだあんま合わせてないけど。俺も元々わりと好きだったんだよね〜」
「うん」
「まぁ、あの人…一人がホントは良い訳じゃないけど、良いんだろうからって…いう気後れがある」
「なるほど」
我ながら回りくどいなと思いつつも結局、「新譜の曽根原さんデモ聴く?」だなんて、一歩引いてしまう。
「うん聴きたい」だなんて素直に伊織は言うのだから、「ホントはダメだけどね」だなんて流してしまいそうで。
ケータイとイヤホンを伊織に貸した。
聴いている伊織を眺めながら、やっぱりなぁとリュージは結局なんだかむず痒くなり、そのイヤホンを外し、「伊織、」と耳元に話しかけてしまう。
「…傷はどーよ?」
「うん?」
「薬飲んだ?」
「さっき」
「そうか」
そしてバッチリ目が合ってしまうことに、もうそこからどうなるかわかっていて。
焦ることもないのだろう、自分はだから伊織に言ったんだけどなと思っていれば、伊織から寄り掛かられる、というか押し倒されてしまい。
反射でギターを壁に掛けたが待て俺の意思、と、「あのさ、」と急を要された気がした。
「ん?」
無邪気にズボンを下ろそうとする伊織に「いや待ちなさい待ちなさい」と、制しながら何を言おうかと詰まる。
「あーもー、」と、取り敢えず伊織の手を引き上げたリュージはそのまま背をゆったりと撫でながら「あのさ、」とまた探す。
伊織は言葉を、今度は待ってくれている、それも焦るけれども、力を、抜こうと決めた。
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