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前日のことを美奈子に相談しようかと思った。
「清海おはよう!」
けれども美奈子の無邪気な顔を見たら、無理だと思った。美奈子は子供っぽい。私の気持ちなんてわからないだろう。
それに、これは言っていいことなのか?言ってしまったら、教育委員会とかヤバいんじゃないのか?第一、生徒達が噂をし始めて、私は…すごく学校に居にくくなるんじゃないだろうか。
「おはよう」
「あれー?何だか元気ないよー?」
そう言われて、何だかいたたまれなくなった。
「実はね…ちょっと気になる人がいるんだ」
「ええー!誰?」
それには答えなかった。いや、答えられなかったのだ。それに美奈子がツッコんでくることはなく、「上手くいくといいねー」とだけ言ってくれた。
チャイムが鳴って悠が教室に入ってきたとき、とっさに下を向いてしまった。顔を見た瞬間、昨日のことを思い出してしまった。
出席確認の時、名前を呼ばれてすぐ、「ほ、保健室行ってきます!」と言ってしまった。それと昨日のことがあって、早歩きで教室を出た。何故だか涙が出てくる。
保健室の扉に、“不在 記入票に書いて利用してね”と書いた札が下げられていた。ラッキーだと思い、入ってすぐの棚の上にあった記入票に“胃痛 高野清海”と書いてベットに寝た。
少ししてチャイムが鳴る。構わず寝っ転がっていると誰かが入ってきた。保健室の先生だろうと思い気にしなかったけど、私が寝ているベットのカーテンが開いた。
何となく嫌な予感がして寝たふりをした。
「寝てるの?」
相手を起こさないように配慮した小さな声。
悠だった。
返事をしないでいると、ふと、頭を撫でられた。まるで、かき回すように、だけどゆっくりと。
「清海?起きてるでしょ」
バレてる。仕方ないから目を開け、布団を口元まで被った。
「可愛いけどさ、どうしたの?具合悪いの?」
「いや、そのぅ…」
返事にどもっていると悠は、私の前髪を上げ、手を当てた。そしてその手を少しずらして額にキスをした。
「大丈夫そうだね」
ごめんなさいと謝ろうかと思ったけど、悠がニコッと微笑んだので止めた。
「り…涼?」
「昨日のこと、思い出しちゃったの?」
休み時間が終わるチャイムが鳴った。次、授業とかないんだろうか。
「授業は?」
「はい、これ」
悠はポケットから紙を取り出した。後ろにはメアドとケー番、表には時間割があった。どうやら次はないらしい。
「仮病使った悪い子は、お仕置きだね。
放課後、待ってて?」
それだけ言って悠は立ち上がり、保健室を出て行った。私は身体の火照りが冷めやらぬまま、一時間、保健室で寝ていた。
教室に帰ると、美奈子が駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫!?」
「うん…」
思いの外空返事をすると、美奈子は少し怪訝な顔をした。
「…先生、心配してた」
美奈子は察しがいい。今考えると美奈子は、大切な友達だったんだなと思う。今となってはもう、過去の話だ。
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