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 その日私は美奈子と一緒に一度帰った。18時近くなった頃に悠にメールした。
 
 一度家に帰ったと伝えると、近くの公園に迎えに行くと返信が来た。お母さんには、美奈子と遊びに行く、夕飯はいらないと伝え、公園で悠を待っていた。
 
 30分くらい待ってようやく入り口あたりに悠の車が現れた。辺りは薄暗い。車に乗ると悠は開口一番に「お腹空いたね」と言った。

「ご飯食べに行こうか」

 そして私たちは近くのパスタ屋で夕飯を済ませた。その頃にはもう暗くなっていて、もう帰るのかな、と思ったら、「公園いこ」と言い出した。こくりと頷くと、そのまま車を発信させた。
 
 昨日と違って公園には、全く人気がなかった。警備員すら、回っているのだろうかと言うくらい、静かだ。こんなところを散歩するのは、微妙だなと思った。
 
「ここ、好きなの?」
「よく来たからね」

 それは、あの奥さんと?
 
 複雑な思いが顔に出ていたのだろうか。悠は私の顔を見て頭を撫で、キスをしてきた。
 
 止められないような、そんなキス。気がついたら私は悠の頭を抱え、髪を乱すように頭を撫でていた。ふと唇を話したとき、何とも言えないような甘い顔をしていた。
 
 なのにふと、悠が外に出たから私も出てみる。すると悠は、車を背にして激しいキスを私にしてきた。キスをしたまま後部座席のドアを開ける。入れと言うことなのだろうかと思い後部座席に座ると、そのまま押し倒された。
 
 驚いて身体を硬直させると、「怖がらないで」と言って、私の足を抱えて自分も車に入り、ドアを閉めた。

 怖い、だけど。
 これからどうなってしまうのか、楽しみ。
 
 スカートの中をあの柔らかい手が弄る。パンツの上から局部を刺激される。
 
 身体がおかしくなりそうだ。
 
 ブラウスのボタンをひとつひとつゆっくりと外され、ブラを外して胸をはまれる。
 
 もう、私は戻れないんだと思った。だけども頭が痺れてる。これは、やってはいけないことなのに、どこかではこう思っている。

 悠は私のものだ、と。
 悠は優しかった。

「初めて?」

 と聞かれて頷いたら、キスをしながらゆっくりと時間をかけてそれを、先から私の愛液で濡らして徐々に挿れていった。
 
 あとは欲望のまま。だけど優しく、気遣いながらセックスをした。窓ガラスが曇って蛍光灯の明かりが滲んでる。その景色は凄く、寂しかった。

 私たちはそれからたくさんの思い出を作り、たくさんセックスをした。それなりに上手くいってた。
 
 上手くいってたからこそ気付かないうちに深みにはまっていた。深みにはまるからこそイライラが募る。
 
 私と奥さん、どっちが大切なんだ、と。その話をすると悠は必ず言うのだ。

「アイツとは別れる。清海とずっと一緒だ」

 けれどもその気配はない。あまりにもストレスが溜まって、抱えきれなくなり、私は美奈子をある日の放課後に呼び出した。私がおごると言ってマックに入った。

「実はね、私、彼氏がいるの」
「あぁ、やっぱり!」

 やっぱり美奈子は気付いていたか。

「で、どうしたの?上手くいってないの?」
「上手くはいってるんだけどね。
ねぇねぇ。もしも美奈子の彼氏がさ、うーん、彼女ほかにいてさ、でも、美奈子との関係を続けていたとしてさ。別れる別れる言ってるのに別れない、でも、簡単に彼も別れられる環境じゃないとしたらさ、どうする?」
「え?」

 美奈子は言葉に詰まっていた。そして、何かを考えるような間を置いて、言った。

「別れないって不倫とか?」

 私は何も返せなかった。

「それはさ、相手に奥さんいるって知っててつき合ったの?それとも知らないでつき合ったの?」
「何とも言えない」
「こう言っちゃ何だけどさ。
その男、まともじゃないよ。そして、知ってたならあんたもまともじゃない。いや、後で知ったにしても、それはいけないこと。バレたらどうするの?」

 まともじゃないって何だ。ちょっと、かちんときた。

「でもさ、きっと相手はさ、奥さんいるのに求めるって事は、体も心も、満足してないからだと思う。だから求めるんでしょ?だったらそれに答えようとおもうけど?」

 美奈子は黙り込んだ。コーヒーをずずっとすする音が癪に障る。

「それ、本気で言ってんの?」
「本気よ。
むしろ彼は奥さんなんかより私を愛してる、それがわかる。よく私の身体を触りながら言うのよ、『君の方が妻よりも繊細で、暖かい』って、結婚しようって」
「サイテー」

 息が、詰まるような思いだった。美奈子の私を見る目は、まるでゴミクズを見下ろすような目だ。

「だから別れて欲しいの。いや、別れなくてもいい、ずっとそばにいたいの!
あんたには、あんたにはわからないでしょうね?いまだに処女だし、本気で好きな人すらいな」

 空気を裂くような鋭い音。何秒後かの頬の鈍痛。そうか、ビンタされたんだ。私はしばらく呆然とした。だけど頭に血が登って目の前の美奈子のコーヒーに手を伸ばしたとき、美奈子と指先が触れた。奪うようにしてコーヒーを手にした美奈子は席を立ち、

「触んなよクズ、汚い」

そう言い残して出て行った。

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