10


 「ありゃ、」「誰?」と二人が驚いている。

 依田が息を切らして入ってきたのだ。
 実は、あの約束はまだ継続中で、あたしが依田をここに呼んだのだ。

「好きな人にちゃんと告白して」

 それがまぁ、こんな形だけど。

「ジャグジー、久しぶりー!」

 ハイテンションののんちゃんは依田の元に行く。依田は大量の酒が入った袋を片手にしていた。

 ノリトさんが凄くぽかんとしているので、「知り合いの変態古典芸能です」と答えた。よりぽかんとされた。

「ちょーど今ジャグジーの実家話を聞いたんだよ卯月からー!すんごいねジャグジー、マジでババアぶっ飛ばしたねー!」
「いや、あの、」

 息切れしている。
 何、そんなにダッシュしたの?依田。

「ぶっ、飛ばしてはいないっす、お久しぶりですのんちゃん」

 一応にかっと笑った依田はスタジオを見渡し、「あっ!」とノリトさんを見ていう。

「新しい仲間ですかのんちゃん」
「いや、違うけどそー」

 それには複雑な表情で依田はのんちゃんを見た。

「ま、贔屓なお客様。大体は三人で、よかったらやりたいけどさ、ね、ノリトくんに卯月!」
「え、」
「まぁ、曽根原さんがよければ」
「ジャグジーみたいに、芸道の浮気者かもしれないけど、まぁ、やってみっかってね!」
「ははぁ、なるほど…」

 それ、通じるのか?
 若干違う気がするが、確かに似ているかもしれないな。

「…のんちゃんはのんちゃんで、芸を見つけたのですかね」
「んー、まだ。けど、光は指してるよ」
「そうですか。
 のんちゃん、好きです」

 驚愕した。
 なにそのノリ。

 のんちゃん笑顔で「ははー!ありがとーう!」と依田を招き入れる。
 いいのかその不完全燃焼とか思ったが、依田は案外満足そうに笑い、「そーゆーとこも凄いかっこいい」とか言っていた。

 あぁ、なるほどね。
 依田、気付いたのか。
 Like,Love,Respect。そう、それぞ芸能、捧げる心中。

「ジャグジーは、相方やっぱり松本くんにしたんでしょ?」
「はい。まぁ、元相方はもう少し道を、弟弟子と極めてみると」
「なるほどねぇ。
 よかった、傷心してなかったね」
「はい、寧ろ元気ですよ」

 地べたに座る猫背が、嬉しそうにのんちゃんを見上げてワンカップを取り出した。

 路上ライブみたいだな、これ。

「のんちゃんも、人生一本見つけましたね」
「そうかなぁ」
「芸道とは人生ですよ。一人でやるけど、一人じゃ道が出来ない。俺今日はそれ言いに来ました。
 のんちゃんや亀ちゃんのおかげで、今の俺の芸能、見つけた気がしたので」

 のんちゃんは黙った。
 しばし考え、「あぁ、」と何かを納得したようだ。依田はそれを見つめて微笑み、「まぁ、」と続ける。

「俺はのんちゃんの生き方に共鳴ですが、憧れです。かっこいい。挫けても俺が応援するんで頑張ってのんちゃん」
「ん…もしかして」
「さぁさ、新しいグラシア。是非見せてください」

 そっか。
 ファンもまた。
 ハマれば心中なのか。なるほどね。LとRはごちゃ混ぜだ。だが凄くしっくりきた。

「亀ちゃんも、漸く見つかったね」
「…ん、」
「一人じゃないんだ」

 そうか。
この、

「バカ野郎、」

 依田はそれに「ひっひっひ」と笑った。

 あぁ、そうだね依田。
 若干ナメてたよあたし。
 拘ってもいた。いまだって、捨てられずにベース持ってるね、あたし。

「…ま、始めよっか」

 のんちゃんがにこにこしながらそう言った。

 なんだっていいんだ。
 人生、そうやって許容してこだわっていく。妙な共鳴は音楽が、あるからだから。

心中 in Rock'n Beat.
人生とは芸能なり。

 久しぶりにピックを持った。
 あぁ、本当に久しぶり。
 新しくまた、ビート刻んで、共鳴から始まって行くように。スタジオに音が、流れ出した。

- 73 -

*前次#


ページ: