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一人で帰路を歩けばやはり考えてしまい。
私は夫、御波雨祢を愛しているけど。
どこかで、それは。
高崎さんが言うように、共感やらが産み出した侵食やら補食のような気がしていました。
だからこそ私は入り込まなかった。
だけど未だに夫の気持ちを少し知りたいと感じて真結美と付き合ってみて。
真結美にも同じく、それほど入り込まずに来て。
それは最早、私は誰を補食しているのだろう。そしてそれは確かに、「多分世間知らずな、けどどこ見てるかわからんけど心理に辿り着いちゃうような…綺麗な変態みたいな」これなのかもしれなくて。
だから狂ってしまったんでしょうか、貴方たちは。
だとしたら確かにそれは、私には一生かかっても多分、届きません。
真結美はどうだろう。
私をいつでも許容してくれた真結美は。これは、補食ではないはずで。
でもだとしたら私は、何処に向かっているのでしょうか。
考えれば考えるほど、虚しくなってきてしまって。
だったら那由多くんは、一体どうなんだろう。もしかするとこんな虚無には、疲れてしまったのではないか。
ずっと考えてその日は帰ってから「どうしてこんなに遅かったの!」と半狂乱になる真結美を宥めて、ご飯を食べてセックスして。
気付いたらもう。
「うぅ…」
裸で快感に悶えるよりも早く感じたその泥沼の行き先に。
「百合枝?」
私を眺めた真結美にひとつ、
「殺してください」
頼んでみて。
嫌なものだな、と感じてしまって。
この虚無の行き止まりに辿り着いてしまったら最後、果てしない。誰も戻れなくなってしまう、そう感じて、私は真結美を抱き締めました。
多分これは、終わりと始まりを繰り返すような、低迷なのだと、無意味に気付いてしまって。
謝りたい。
誰も彼も訴えたかった那由多くんへは、辿り着こうともしていない。私は端からそう、彼の変態を見届けるような人間ではなかったのだと。
飛び立ってみて漸く気が付いた。私が産み落としたそれは、多分、水溜まりへだったのだと。
「真結美さん」
「どうしたの百合枝」
もしかすると私は。
「わかった気になっていて、ごめんなさい」
そう、夫の背を思い出して。
だけど雨祢さん。
それは貴方も私と対して変わらない。
多分、どちらかと言えば躍起になり気が狂っている。貴方の愛情は、それは。
多分、
「百合枝、」
「明日私は出ていきます」
そう。
もう、無理なんだ。
「え?」
「すみません」
胸元で真結美の髪を撫でていれば、真結美はまだ、私の快感を貪るように。
そう、これは。
補食だ。
虚しさだけが、夜の漆黒を染めていくような気が、しました。
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