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朝まで何度かそうしていた。
自分の奥深くにあった寂漠を、引っ張り出されては単純によがった。雄の種族はこんな仕組みで。
だけど何故だか悲しさが勝った。
疲れて眠った雨祢を見て、漸く息が出来たように。
生臭く生命を知る。
「はぁ…」
溜め息すら覚束ない。ただ繰り返した「愛して欲しい」。最早俺の悲痛か雨祢の叫びかわからなかった。
ゆっくり立ち上がって服を着る。
新鮮なほど、憂鬱だった。
と言うよりはもう言い知れない。賢者タイムを超越した虚無感ばかりが残った。
黒から白に変わるような朝焼けをカーテン越しに見て漸く、怠くもベットから降りた。
足を伝った生温い体液すらどうでもよかった。身体中かさかさする。
何か、開放的になった気もした。
ベランダに出て、ダルさから手摺りに凭れる。朝日は今日も白い。情景は灰色で。
あの闇に飲まれてしまったな。
メスもオスもなく、一人の人間として一人で、生きていきたいと飛び立ったはずだったのに。
眠気が不意に来て、同時に恐怖が襲ってきた。
愛されるとは一体なんなんだろうか、ボケた頭で室外機の上に乗る。そこから覗いた世界は酷く清んでいるような気がした。
わからない。この泥沼から、抜け出すには、けれど抜け出す事への恐怖には。
飛び立つ先が灰色だったとして。
白く美しい世界なんて、恐らくは。
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