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美容室への出勤前、ただただ浅く息をして、傷付いた腕をダルく目隠しにした君にただ、「行ってくるよ、那由多」と声を掛けて出勤した。
腰を庇って一日中働いていた俺には二人とも、呆れて働いていた。
帰ればまた気が狂ったように那由多を抱いて。
だけどそれはもう、どこかで気付いた。
那由多の腹の傷を指先でなぞる。
君があの時、俺の手を取りこの人生を歩むのを拒否して俺が刺したその傷。
思い出した。
そしてこれはもう。
俺が生きていくための補食だった。
最高に幸せで。
最高に死にたくなるような倒錯と泥酔だったんだ。
なにも言わず、それから素直によがり続ける君は酷く美しく、
俺も君もどこか気が狂ったのだと悟った。
愛を求める君も。
愛を求める俺も。
そう、その進化はまさしく。
突然変異の前段階。
「おいでよ、雨祢」
と言った意味が漸くわかった。
君はそして、その次の朝、雨の日だった。
突然俺の前から跡形もなく姿を消した。漸くそれで俺は目が覚めたから。
雨の灰色のその日。
公演当日の、土曜日だねと雨に濡れた室外機に登り。
景色が急降下して、町の綺麗
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