残暑×秋雨前線
最初の残り香は秋雨前線のような浮遊感だった。
長く長い、そんな気がするあの湿った熱さは、熱は、一体どこへ逃げていくのだろうと、ぼんやりとテレビを付けて秋子は考えるのだった。
甘いプリンは温くなっている。プラスチックのスプーンの固さが嫌いだった。
生温い恋人を思い浮かべては心は水浸しになるようだ。それも慣れたような気がする1回目の秋は霧雨のようだった。線香花火の飛び火のような半年だった。
明日は早く帰るよ。優しい笑顔の夫はいつもそう言う。それだけ言う。
明日の昼は相手できないわぁ、と軽く言うボサボサ頭は温もりをボロアパートに残して秋子を置き去りにして仕事に向かった。
もうすぐこの停滞も終わりにしなければならないだろう。秋子は生温いプリンの最後を滑らせてぼんやりしてしまう。
夫はいつも穏やかな桜のようにピンク色の人。恋人は寂しさの入り口のようなオレンジの人。
どちらも熱い恋であるはずなのに、夫と顔を合わせる毎日も、恋人の元へ通うときも、
それぞれと離れるときも残暑、それぞれの気持ちを後ろめたく残している。生温いプリンのような女。それほどだらだらしている。
今日はもう、一人でいたい気分だった。秋子のセンチメンタルはいつだって晴れない。いっそずっと停滞して長々、だらだらこうしていたいのに。
どうしてふと流れ込むのか、夏の恋情も残り香の秋も。
テレビはぼんやりと天気予報、秋雨前線停滞中。残暑、秋の入り口に佇むように。
いつかどちらかを切り捨てるとき。それをぼんやりと一人の自宅で考える。今日はカレーにしようかな。旦那が帰ってくるらしいから。帰ってこなければ明日もカレー。こんな日常は生温い。
哀愁も愛情もいつか枯れてしまったら。
やはりセンチメンタルは女をダメにするのね。私はいつか、この透明スプーンを、好きになりたいって言うのに。
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