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 急に視界が狭くなったような気がした。

 いや、元から広くなんてなかった。だけども、何の前触れもなく黙り窓を眺める彼女に、自分が現在に戻り過去の涼はいなくなったと悟った。

「蝉の脱け殻って、本当に軽いんだと思った」

 ふと佐奈子がそう言った。それは何かを比喩しているのだろうか。

「…どういう意味で、ですか?」
「そのままの意味」

 はっきりと答える気がないようだ。

 そんな中、突然の耳に付く滑車音に、祐介は思わず振り返った。

「せんぱぁい」

 校則違反であるパーマの髪をツインテールに結ったスカートの短い女子が佐奈子の方へ歩き出した。近くで見ると化粧もピアスもしている。

「あれぇ?この人誰ですかぁ?」

 おまけにこの舌足らずで間延びした喋り方。いわゆる典型的な現代っ子と言うヤツである。

「さあ。本を借りに来たみたいだよ」

 そんなことを平然と佐奈子は言ってのける。

 恐らく、俺はこの人に嫌われている。

 校則違反の少女はやけに佐奈子にべったりとくっついた。

 恐らく佐奈子の後輩なのであろうその少女の腕に、白い包帯が巻かれているのが酷く目立つ。もはや彼女は隠す気もないだろう。
 思わず凝視をしていたら、ふと視線を上げたときに目が合ってしまい、慌てて目を逸らした。

「後輩の西野真由」

 佐奈子が状況を読んだように説明をする。

「…仲、いいんですね」
「後輩って、可愛いもんだよ。
この子ね、死にたいの。そうは見えないでしょ?」
「うん!死にたい、病んでる!」

 こいつ、頭足んねぇんじゃないか?

「…どうして?」
「そこ、聞きますーぅ?色々あるんですよ、いいじゃん?
この前だって誰か死んでたし、羨ましいなぁ」

 しかもこいつ、その死んだ人が目の前にいる先輩の弟だと知らないのか?
 最低最悪のバカだな。

 佐奈子は、椅子から立ち上がる。

「じゃぁ、この子も来たし、帰るね」

 そう言って二人は図書室から去っていった。祐介は何となく、その歪な背中をじっと見つめていた。

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