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「ごめんなさい、そうじゃなかったんです。
いや、それもあるんですけど…なんだかいま、一人で眠りたくなくて」
「…あぁ、」
少しだけ表情を崩した藤川瑠璃に、なんだかやっぱり気の毒なような…胸に少しだけ針のようなものが、刺さる。
どう対応するのが正しいだろうか。確かに、散々だったと言うそれには間違いないんだし…。
「んー…。
まぁあれか。じゃあもう眠くなるまで好きにしろ、な?ひたすら喋ってても良いしテレビ観てても良いや。それでどうだ?」
「…なんか、」
「いや、まぁうん俺はその辺の若者だと思ってくれればいいから」
「ん、」
「こういう時は気が向いたことをしよう」
そう提案すれば藤川瑠璃はそのままで「あはは、」と、控えめに笑った。
「…本当に何から何まで優しい」
「……まぁわかんねぇけど、君は甘え方を知らないタイプなんじゃないか?言うて…17だもんな。試しに呪文というかお経のようにペラペラ喋ってみたら?俺はじゃぁ、テキトーに聞いているか寝てるかわからないってことで」
多分女の子って愚痴るの好きだよね?答えはない方が良いくらいの感じだよね?多分、経験上。
「…なるほど」
「気になるならまぁこちらを向かず喋れ喋れ。もしもイビキかいたらごめん」
「…なんだか…それだけで少し楽になったかも」
「そうか」
「…楽になったら何から、話そうか…」
そう俯いたので「じゃぁ、」と、自然と頭を撫でていた。
「うーん学校でも家でも嫌なことって」
「あぁ、じゃぁ……知られちゃったし家から行きますか…。
…お兄ちゃんはお兄ちゃんなんですが、お兄ちゃんじゃないです」
「はい、わからないわ。でもまぁ一人言だからいいわ」
「あぁはい。
…ある日兄に言われたんです。私には一欠片も血の繋がりがないから、なんか…いいんだそうです。兄はお父さんと別の人のお子さんで、お父さんは私のお父さんじゃないと…」
お互い連れ子と言うことか。
「…知ったの、中学校の時なんですけどね。でも…きっと予想している感じの「ショック」はまぁ、なくて。お兄ちゃん23歳なんですけど」
「6歳差か〜。小学校被るか被らないかのやつ」
「ちなみに千秋さんはいくつなんですか?」
「28、高卒」
「…珍しい」
「いやぁこの世代多分半数はいるぞ。時代が急速に進んじまったから確かに不利な人種だけど。君は大学行くの?」
「…いえ。高校すらまともに行けてないし」
「そっか」
話はそれたようで「学校にも、そんなに行きたくなかったです」と語る。
「いや…でも、家にいなくて…済むからって今行っているのが本音で。本読みに行ってるんです。
現実世界ってうるさいでしょ?本は静かだし、現実ではないし。でも、単純に好きです」
「それは発散ってやつ?」
「…けど結局煩わしさがあれば一気に不可能になる世界。これって、現実と変わらないですね、今思ったけど」
「……まぁね、そうだね」
「今日も…読めなかったなぁ。鞄、忘れちゃいましたね。30ページくらいしか読めなかった」
「……勝手な推測だけど君は結局、学校からも逃げたかったから、今日は来たんだよな?」
「そうですね…。ベストタイミングだと思って…。みんな死んじゃえばいいのにとすら今日思ったところでした。
今日ね、机にコンドームが撒かれてたんですよ、使用済みの」
「……うっわー」
今時の子供はそんなことまでしちゃうの?ちょっとゆとりからするとあり得ないというか思い付きもしないんだけど。
「なんというか…悪質克つ巧妙だな。どう処理していいかわからんやつ。変態の仕業?」
「いやぁ、多分クラスの…パンツ見えそうな女の子、ちょっとやんちゃな。その子が好きな男の子と私が寝たの、バレちゃったみたいで。言いふらすタイプのチャラい男子だったんですよ」
「……いやだぁ女って怖っ」
「セックスも自分本意で援交みたいな男子なんです」
「……君の観念が歪んでいる理由がわかってきた気がする。なるほどそりゃ吐くわ」
そうなってくると当たり前に行き着く「好きな子はいないのか?」という無難すぎる質問。
彼女はふと俺を見て撫でていた手を頬に当て「千秋さん」と答えた。
うーん…。
「からかうなって。学校とかに」
「じゃぁお兄ちゃん」
「…うーん」
「実際好きですよお兄ちゃん。
お兄ちゃんはある日言ったんです、好きだからするんだって。お兄ちゃんはちゃんと、…私を、」
言葉に詰まっていた。
…恋愛経験がないのは仕方のない歳だろうけど。始めからそういう観念で来てしまっては、彼女にはいま戸惑いしかないのかもしれない。
「ホントに好きだからヤるもんだったわけ?」
家にいたくないのに?
いや、これってツッコミすぎ?
「いいえ、全然」
「…複雑そうだな君は」
「ただ、快楽は現実において、非現実なようで、何も考えずに逃げられます」
「…それはわからんでもないけど、えらく野郎のような感性だな」
…実際は。
一番生きてると感じるぜ俺は、というのはただここにいるだけの俺が言うべきでもない。
「なんで、千秋さんか…なぁ。
なんだか、です。色が尽きました」
「色?」
「…私なんて、空気と同じでそこにあって、ないもので、それはまわりと変わらないと思っていたけど。
貴方はいまも、「ここにいる」と言ったのだし、私に気付いた、から…」
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