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藤川瑠璃は俺の手をすりすりして、なのに切ない表情をする。
「それが貴方にはなんでもないことだというのが…生きてると感じる、こういうことなのかなって…」
…少し、というか。
「まぁ、わかる気はする」
俺がじっと、今ならはっきり思う、血反吐を吐くように堪えた時期を経験して行き着いた物に近い。
何も変わらない部屋や日常だったくせに、記憶の背景はダークグレーで思い出せるような日々。
逃げたくなる。
「君はねぇ、けどきっと、自棄になっているんだろ?ハッキリ言おうか、それは失礼だと思うよ」
「わかってます。でもそれは謝りました。だから今言うやつは、違くて」
「…信用しろと?」
「ですよね」
…悟った気になる子供はわりと厄介だ。
だが、俺にだってそんな頃はあったし、それがあったから気付けた色々だってある。
「…でも、本当にそう思ってますか」
「…は?」
藤川瑠璃は少し笑い、「なんだか、違うような」と言った。
「…もしも、ですけど。
似た者同士だったとしたら、ですけどね。もう少し遠くにいそうで、千秋さんは。そういうのを考えると……私には出来ないことをやっているのかもしれない」
「…何が…?」
…激しく胸が痛くなる気がした。
急にぐさっと刺されたように、言葉は真っ更でホワイトアウトする。現に、何を言おうかと奥で考えながら焦燥が目立ち痺れてしまった。
それをじっと黙って見つめてくる藤川瑠璃に俺は、表情も引きつって笑ったことも自覚するのに、「お前は凄いなぁ」なんて、ただ口が動いただけの意味がない言葉が出てくるくらいの反射しか返せない。
藤川瑠璃はそれに、まるでしてやったりと言いたそうな笑顔で「初めてでしたよ」と言った。
「男の人に抱いてくださいだなんて言ったの」
「…あっそ、」
「千秋さん、」
「なんだよ、」
「…もしよかったら、瑠璃って呼んでくれません?少なくとも二人称単数代名詞じゃないやつ」
「に……ん?なに?」
「お前とか君とか貴方とか、そーゆやつです」
「お、」
「違和感あるんで」
「…じゃぁ、瑠璃ちゃん?うーん瑠璃でいい?」
彼女は子供のようににやっと笑って「はい」と言った。
このタイミングで可愛いとか、正直裏があるとしか思えない俺の性格の悪さ。
いや、多分、こいつ歳のわりにかなり性格が曲がっているとみた。
「…あんまりかんけーないけどね、お前性格悪いって言われんだろ」
「あぁ、言われてもおかしくないですね」
「最早素直なのかなんなのか」
「瑠璃です」
「瑠璃、はい」
「けど、本当ですからね千秋さん。好きな人とすることなんですね?」
「……だとしたら今日はダメだからっ。いつかは不明瞭でっ、」
「わかりました」
ふふっと笑った藤川瑠璃は「…やっぱり漸く笑えました」と、素直だった。
「ん、あっそ、はいはい」
「わきまえありますか?」
「ねぇよバカ」
「あはは。
おやすみなさい」
藤川瑠璃はその場で突っ伏し、目を瞑った。
ナニコレしょーもねっ。
悩んでいたことが一気にどうでもよくなった。まぁいいや、それは頭が冴え整理が出来たということだ。
暫くそのまま眺め、身体が僅かに上下したのを見計らい、俺は藤川瑠璃をベッドに寝かせてやった。
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