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 非常に清々した、そう思ったはずだった。

 ふと目が覚めて側に、突っ伏して寝ていた瑠璃に、俺はどうしたんだと思えて仕方がなかった。

 どこかで。
 ……どこかで、あの日もそうだった。自分がまるで足枷のようだと負い目すら感じたことも、もう4年は経っていた。

 また寝にくそうに寝かせてしまったなと、なのに寝顔すら子供らしくもなく少し汗ばみ苦しそうなことに、どこかで気が遠くなる、非現実的な事実が日常に溶けつつあることが不思議で仕方なかった。

 …どこからどこまでの道徳が無責任なのだろうかと、汗を拭うように髪を撫でればどうしようもなく、やり場も答えも何も見えない朝の日差しが差し込んでいた。
 それに「うぅ…」と起きる瑠璃も俺も低血圧だった。

 起こしたな、悪い。
 と出てくる前に瑠璃は俺の手を取りぼんやりと、滲んだ色の目で俺を見ては「……おはよ、ございます…」と言った。

「…寒くなかったかそれ」
「いぇ…」

 俺はその瑠璃の手を払うように両肩を掴む、いや寒かったようだ。全くどうしょもないと、着たままにしてしまったスーツのジャケットを脱いで瑠璃の肩に掛けてやった。
 結局俺の汗。全くどうしょもない。

「…コーヒー入れるから、取り敢えず」

 まだ言おうとしている最中に瑠璃は少しだけ立ち上がった。
 ふと熱に塞がれ言葉を失くした事に、俺は一瞬何が起きたかと、少し遅れて頭が真っ白になった。

 そんな朝だった。

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