Weekender
「だからこれ嫌いだっつってんだよバーカ!」
イライラしたように、10分でタバコを3本消費し、ずっとパソコン向かっていた夏音に特製コーヒーを入れたらこれだ。こいつ絶対に自律神経が乱れている。砂糖は頭が冴えると言うのに酷い言いぐさ。
「俺もその歯みがき粉みたいなやつ嫌いなんだよ」
大体メンソールなんて吸うか普通。さっきから家中歯みがき粉。我慢できないから止めて欲しいのに。
「あっそう、でも俺は好きだね。
もーいいウザい。ボイコットボイコット。マジやらない」
配慮してくれん。もう俺もなんでこんな奴に気を使ってんだよまったく。
「いや、せめてまとめて。依頼だから」
「知ーるか味覚障害!編み物かメンテでもしてろ!」
しかも仕事してくれないってどういうことだ。
とか睨んでいればマルボロメンソールの空、思いっきり顔にぶん投げてきやがった。
「痛っ」
ウザっ。
はいはいわかりましたよ。いらっ。俺もじゃぁボイコットしてやりますよとソファーにふて寝して手元のカギ編みを取り、カリカリカリカリイライラを発散することにした。
しばらくイライラが治まらない。コーヒー飲んでも治まらない。どうして、砂糖も牛乳も良い調子なのに。
「ん?」
パソコンに向かいっぱなしの夏音。画面に目をやり手を止めている。
というか凄く珍妙に見入っているみたいだけどなんだろ、仕事かな。
見てやろうと起き上がって背後に立てば。
「ん?」
どうやら画面の端でYouTubeを眺めているらしい。エロビデオだったら本気で殴ってやれたのに。
あ。
猫だ。
あ。
コレ知ってるぞ。
飯食ってる猫の背後に、キュウリ。これ、知ってるぞ。
「なっ、」
お前、さては知らないな。
猫が食い終わりキョロキョロ。
キュウリに気付いて突然の、凄いジャンプ。
「うわびっくりした」
「ふっ…」
じわりじわりと来たらしい。
「うひゃひゃひゃ、何コレ何コレ!」
確かにこれ、面白い。
「あー聞いたことあるわ。猫ってキュウリ嫌いらしいよな。にしても凄いな」
超飛んだな猫。
「すげぇトンでる!でもわかる〜、突然あったらビビるし俺ナス派だわ」
それに夏音は腹抱えてる。
何故キュウリ嫌いなんだろ。幽霊的なやつかな。ふらっと現れた幽霊的な?
キュウリは馬だから?ナスは牛だから?わかんねぇ。てかそんなにウケるかこれ。
「お盆みたいだなお前」
「オボンって何?」
「死んだ人があの世からキュウリに乗ってやってきて、ナスに乗って帰るんだよ」
「ナニソレ。何教」
そう言えばヘルシンキって馬食えないのかな。
「多分日本文化」
「てか俺の下ネタ無視したのソウちゃん」
つか、右にはちゃんと書類文書開いてんだな。
「てかちゃんと仕事してんだな」
「俺の全面無視なのソウちゃん」
なんだかんだお前って普通だよなー。んなちゃんとやるなら俺も仕事するか。まぁ、お前がそのリストあげないとどーしょもねぇしやりたくないけど。
「お前が仕事してんなら編み物止めるわメンテする」
「あっそう!見事にハズイね!」
だからそうやってだらけんのかな。
眠気にも脳にも良いし、笑えたならコーヒーでも入れてやるよ。
「コーヒー飲む?」
「だからいらねぇって、ブラック!」
「あいよー、お前よくこんな泥水飲めるな」
まぁ、鉄の味するよな。俺だから砂糖と牛乳入れるんだけど。
そんなに嫌なのかなんなのか、若干夏音は俯いた。やっぱ、殺伐としてんなら飲めば良いのに。
「故郷じゃ…当たり前だったんだっつーの」
「ん?」
よくわかんないけどね。殺しが嫌いでこの業界、でも血みたいなブラックコーヒー派だなんて。
「うるさいぶっ殺す喉乾いた!」
なんだかな。
何に餓えてんだか、まったく。
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