Weekender


うわっ、最低。
こっちとら、急に来た仕事(脱税したあげく文書カイザンがバレてお役ゴメン、結果行場なくして死ぬしかなくなった政治家から頼まれた貶めたい相手の身辺調査)を朝からやっててイライラしてんのに。

「だからこれ嫌いだっつってんだよバーカ!」

なんで執行人のこいつがこの、牛乳だかコーヒーだか砂糖だかよくわかんねぇ飲みもん持ってくんだよ。どー考えてもタバコに合わねぇだろこのクソ野郎め。

「俺もその歯みがき粉みたいなやつ嫌いなんだよ」

しかもなんだぁ?人のタバコを歯みがき粉呼ばわりしやがってこの野郎。何故わからん。メンソールのリラックス効果を何故わからんのだこの野郎。

「あっそう、でも俺は好きだね。
もーいいウザい。ボイコットボイコット。マジやらない」
「いや、せめてまとめて。依頼だから」
「知ーるか味覚障害!編み物かメンテでもしてろ!」

全体的にいけすかねぇので最早ありがたきメンソールの、いつの間にか空になった箱を投げつけてやった。

「痛っ」

俺の恩恵を受け取れバカ野郎。チャカのメンテでもよくわかんねぇ編み物でも良いからやっていろ。俺に触ると火が着くぜ、バーカ!
不貞腐れたように相方は、ホントにソファーに寝転んで、前回の続きなのか編み物を始めた。

まぁ、そうね。どちらかと言えば「殺し甲斐あるレッツゴー!」よりか「依頼主の方を殺してやりてぇマジいらいらする」だわな。でもお前が悪いんだって…。

カリカリカリカリうるせぇな編み物。なんなんだよそれ、絶対妨害しに掛かってるよなこいつ〜!うぜぇ。マジうぜぇ。

もういい癒しが欲しいわ。なんかないのYoutube。なんでもいいわキーワード「癒し」あとはなんだ、「猫」とかにするか。もう鳴き声を流してもいい。とにかく俺は猫を視界の端にしてでもこのクソみたいな仕事をまとめる、そうする。

「ん?」

あれ、音声ないけどなにこれ。
え、なんで、なんで飯食ってるだけなのトラ猫。

「ん?」

気付いたらしいソウちゃんが、ちらっとソファーから覗いては最早編み物を捨てて動画を覗きに来る。

なんなのソウちゃん。俺別にやましいビデオなんて見てな…。
え、なんで猫の背後にキュウリを置くの飼い主。謎なんだけど、え、何目的なのそれ。ひっそり過ぎてそのキュウリ、ウチの相方みたいなんだけど。不審者?
あ、気付いた猫。
食べるの食べるの?どーするの、どーするの、猫。

「なっ、」

うわぁぁ。
すっげぇトンだ。

「うわびっくりした」

何故なの何故なの。
え、けど、

「ふっ…」

ヤバい。地味にツボかもこれ。なにそれ、なんでそんな飛べるの…トラよ!

「うひゃひゃひゃ、何コレ何コレ!」
「あー聞いたことあるわ。猫ってキュウリ嫌いらしいよな。にしても凄いな」
「すげぇトンでる!でもわかる〜、突然あったらビビるし俺ナス派だわ」

俺は正直疚しさで言ったらキュウリよりナスだと思うよトラ猫。勝手なる妄想だけど君は襲われると思ったのか、飼い主に、猫よ!

「お盆みたいだなお前」とか言われてるけどははー!よくわかんないわって。
オボンって、なんだ?

「オボンって何?」

キュウリとかナスとかまでトレーみたいなやつで運ぶの?日本人って。

「死んだ人があの世からキュウリに乗ってやってきて、ナスに乗って帰るんだよ」
「ナニソレ。何教」

そういう宗教なの?俺んとこ違うけど。

「多分日本文化」

てかどうでも良いけど何?ナスとかキュウリとか下ネタかよみたいな俺の頭何?我ながら大丈夫?

「てか俺の下ネタ無視したのソウちゃん」
「てかちゃんと仕事してんだな」

てかこんなこと考えながら仕事しようとしてる俺何?せめてツッコミを入れて欲しいんだけど相方。

「俺の全面無視なのソウちゃん」
「お前が仕事してんなら編み物止めるわメンテする」

俺より真面目かよマジで。え、なんか可哀想くね、俺。

「あっそう!見事にハズイね!」
「コーヒー飲む?」
「だからいらねぇって、ブラック!」
「あいよー、お前よくこんな泥水飲めるな」

はーあ。疲れた笑いすぎて口ぱっさぱさだわ。
殺伐スイッチ入れよ。けどソウちゃんお手製ゲロ甘コーヒーはマジで口に合わないい。

故郷の、貧しい水もなかった頃を思い出すんだよ、マジで。ブラックよりそのゲロ甘コーヒーの方がさ。

「故郷じゃ…当たり前だったんだっつーの」
「ん?」

貰われた後に知ったコーヒーは、飲んだことないけど、砂糖なんて女しか入れなかったんだよ。

「うるさいぶっ殺す喉乾いた!」

あー。思い出したらムカついてきた。
コーヒー頭から掛けやがったあのクソガキ時代のあいつ。ぶっ殺してやる間もなく、死んじゃったっけなぁ。亡霊、取り憑いてるのかしら、俺。

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