陰と陽


いよいよ一喜にそんな心配をされてしまった。俺としては君のその奥手さに、充分気長に見守っているのに。

まぁ、彼女は俺には勿体無いよ。君くらい純粋なやつの方がいいし、何よりその気じゃないか、お互い。

はは、本当に君ら、全然進まないんだから。

去年より、別の意味で、やっぱり一人も心地良いんだ、正直。

君らはけれど、確実に歩んでいる。照れた一喜が俯いた。

幸せなんじゃないかなぁ、このモヤモヤだって。やっぱ、俺にはなかったなぁ、そういう純愛。

一喜と出会って、10年少し。彼女と出会って3年くらい、龍平が旅立ってから、もう少しで帰ってくる。

そして、透が死んで4年になった。
感慨深そうに一喜はふと、道端の紫陽花を見ている。

紫陽花に毒があるのか。それはきっと、一喜が熱を入れている小日向さんからの情報なんだろう。

本来一喜はそんなこと、なんというか興味を持つ奴ではなかったんだけど。

情緒的じゃないか。道端の、こんなに綺麗な梅雨の時期に咲くこの大輪。これに毒があるだなんて。透は知っていたのかな。

そろそろ透の命日が近い。たまには実家に帰ろう。一喜と一緒に、この紫陽花を持ってさ。

透、お前が好きな晴れた陽気だよ。あの雨の日から何度、そっちで見た?
それとも天は、雨でも晴れでも、見えないもんなの?

染々とする一喜にも、やっぱり。

透、俺たちね、紫陽花に毒があるって知らなかった。いま知ったよ。だから、たまには兄ちゃん、お前に会いたい気がするよ。教えて、あげたい気がするんだ。

綺麗な花には何かがある。ホント、俺はいつだって、そんなことも知らなかったんだ。

二人でなんとなく笑って、本当に突然だけど、まぁ、来た家を戻って。

喜んでくれるはずだ。
俺たちきっと、少しずつ、お前を捨てて昔に、戻る決意ができたから。

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