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 銃を出せと言ったケリーに俺は従ったのだが、「アホかお前はマズル向けんなや」と顔をしかめられてしまった。

「え?」
「…撃たれるかと思うわ、普通向けない」
「あ、すんません…」

 改めてじゃあどうやって渡そうか、バレルを掴んで渡してみれば「出来るやないか、アホ」とケリーはグリップを握って「へぇ、」と、イツミと同じ、拳銃を舐めまわすかのように眺めたのだった。

「俺もハジメテは怒られたヨ」
「お前は普通に私を殺そうという意思で向けてきたやんユミル」
「だってケリーはレミントンだった」

 話ながらユミルもケリーの手元をキョロキョロと興味深く眺め、「コレ使い方わかるの?ケリー」と聞いていた。

「あーそうね、大して変わらんけどリボルバーには見ての通りスライドがない。薬莢が落ちない変わりに回転する」
「へぇ、」
「だから撃つのが楽だし早いけど、」

 ケリーは少し先の椅子にマズルを向けバン、と涼しい顔をして1発ぶちかました。

 椅子の頭は木っ端微塵になってしまう。

 ただただ驚いた俺をよそに「わーホントだぁ!穴あいちゃったネ!」と喜ぶユミルに「だろ」とケリーが普通に会話しているのが異様だと感じた。

「けど6発しかないんよ。弾はこうやって、」

 ケリーはさも当たり前にくるっとシリンダーを外し、

「この穴に1発づつ詰めて」
「ふんふん、375あたり?」

 指を差し説明をしながらまたシリンダーを戻す。

「そう、まさしく375。
 で、あとはオートマチックと変わらずハンマー上げてトリガー引けば弾が出る。この先のフロントサイトから自分で見て照準を定めるんだよ」
「へぇ〜。借りて良い?」

 ユミルがまるで子供のようにそう言うので「あぁ…はぁ、」と気後れ気味になってしまったが、ケリーが「教会が壊れるだろアホ」とユミルを制した。

「…まぁ懐かしいもんだなリボルバーなんて。いまやオートマチックだろうに。
 …確かに…長さも中くらいのモデルを選んだのは実用的だが、お前これ撃てたんか」
「…いや、使ってない」
「訓練では使ってないんか。ははっ、宝の持ち腐れだわ。
 まぁこれは子供が撃てるほど軽くねぇよ、身体支えられずパーンと頭飛んじまうな。それこそオートマチックの方がまだ撃ちやすいだろうに。発展途上というより、酷く甘い。大日本帝国の頃のようだな。
 しかし、確か日本の軍や警察支給のリボルバーは自国開発したSAKURAか、ニューナンブモデル60だったはずなんだけど」
「…そうなんですか」
「お前、オートマチックは使えるんか?」
「…それは水鉄砲のことでしょうか」
「は?」
「こういう形じゃない拳銃の訓練は水鉄砲でした」
「はあ!?ホンマに言うとるんかそれ、」
「…はい」
「…っはははは!ナニソレ頭どーしちゃってんだよっ!」

 ケリーはひたすらに腹を抱えて笑った。
 ツボを押したようで最早止まらない、ひくひくしつつも「あ、あのねえ…っはははは!」と暫く爆笑していた。

「さ、流石にアホジャパンでもそりゃねぇやろし、えっ、とイツミは確かやれベレッタライフルやらレミントンやら…AKフォーティセブンやらを押収したと言っていたが、お前らはなんだ?そんでホンマに狩りしか習っとらんの?」
「狩りは確かに習いましたけど」
「ふぅん…ますますわからんな。
 軍隊やらなんやらが関与していないにしては、武器は狩り用でもない。バックにどこかの軍隊が付き武器を流して小遣い稼ぎでもしたんかねえ…という見解に至ったかな、私は」
「えっと…一体何が何やら」
「そうだろうな。
 今回私とイッセイが調査しているのは君たちが収容されていた宗教団体についてだ。
 宗教団体とは仮の姿でその実、軍隊訓練の秘密組織かという疑惑が浮上したんでな。それを捜査しているのがイツミやアタミといった工作員で、この宗教組織は世界各国に至る。
 殲滅という判断にまで至ったのは、一部テロ団体にこの組織出身の者が存在したからだ。
 彼らは各々神を語り数々のテロを起こしてきた。年齢は皆二十歳前後でしかし出生、職歴、経歴が全て真っ更な者達だが、共通点は皆日本人かハーフ。
 こんな虫も殺せない面をしているがユミルも似たようなもんでな。ユミルの経緯は不明だが、彼はこう見えてフランスの裏路地にあったロシアンマフィアの事務所を一人で殲滅するほどの化け物だ。それには訓練をした者がおり、命を下していた者たちがいるはずだが、君と同じく発見時には薬漬けで意識も記憶の一部も吹っ飛んでいた」

 思わず側にいたユミルを見てしまったが彼はなんの違和感もなく、やはりマイペースに拳銃を眺め、というか、あろうことか分解して楽しんでいるのだから驚愕でしかなかった。

「そこで、私は君が過ごしてきた人生を聞いておきたい」
「…貴方は一体なんなんですか」
「ははっ、君にはわからんくらいの世界的にごっつ偉い、警察や軍隊なんかの上にも立つ神父。しかし神以下だと答えておこうか。
 お前はどうやらバカではない。話が進みそうだな」

 そうして神父は笑い、獣のような目で俺を見るのだった。

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