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それから俺が連れて行かれた場所は「教会」というところで、そこは、俺が過ごしたあの場所と対して変わらないけれど、という説明をなんとなくスミダイッセイから聞かされた。
イッセイと共にいた金髪はそこの神父で、名前はケリー・マクホンというのだそう。
どことなくは感じていたが、彼は俺ともスミダイッセイとも違う人種で、「ロシア人」なんだと、イッセイは言った。
「…と、言ってもそれは仮の姿だけどもね」
「仮ではないけどな」
なんだかよくわからないが、「彼はよくわからない日本語を使うけれど、そんな時はなんとなく教えてあげてね」とイッセイはケリー・マクホンについて補足する。
「俺は教えるのが得意じゃなくて」
照れ臭そうにイッセイは笑った。
教会の入り口で彼は早々、「じゃぁ、ちょっとフィリピンまで行かなきゃならないんだ」と告げる。
「もー行くん?」
「うん、まぁまぁ長くなるかな」
「あっそ」
「その間に秘書は彼らに任せると良いよ」
「ヒショ、かぁ」
「イッセイ!」
すると、教会の上から声が降ってきた。
色白で金髪の、男だか女だかよくわからない人間が窓から落ちそうな程に身を乗り出して手を振っている。
「おー、ユミル。元気だねぇ、危ないよー」
「イッセイ!」
「…あのバカ落ちて死にたいんやろか、危ねぇっつってんだよクソガキぃ!」
ケリー・マクホンがそいつに叫び返すも、「お帰りケリー!」と、そいつは非常に自分の調子で、元気だった。
「ユミル〜、ホンマに落ちちゃうから降りておいで〜、君の仲間がやってきたんよー」
「仲間ー!?なにそれー、よくわかんないヨー!わかったね行くヨー!」
そいつが引っ込めば「やれやれ大きくなっちゃって」と、イッセイは嬉しそう。
「そう言えばイツミは元気だった?君、会ったんだよね」
「…え?」
イツミ?
「ケリーも会ったんだよね」
「あぁ、まぁ死んでないな」
「でしょうね。あの子はまぁ、死なないよね」
しかしそう言うイッセイは、笑顔だけれど少し寂しそうな気がして。
ケリーもそう感じたらしく、「会えば良かったのに」とポツリと言った。
「…まぁ、これが終わったらそうしようかな…って言っても、覚えてるかなぁ」
「イッセイ!キた!」
さっきの金髪が現れた。
「やぁユミル久しぶり。大きくなったね」
「まぁね!」
「何歳だっけ」
「20!」
…俺が予想していたよりも遥かに歳を取っていた。
「ははっ、日本なら成人式だ」と、イッセイが楽しそうに笑う。
「なにそれー、よくわかんないよー。
あ、仲間ってこの子?」
ユミルという20歳は俺を指差し、興味深そう、しかし少し不安そうに見える複雑な表情でそう言う。
「そう、今日からYour brother!」
よくわからない言葉だった。
「ワッツ?マイブラザー?」
「イエスイエス。ゲラロン」
「英語で喋るなや、腹立つ」
「ワーイ?」
「イリティートゥ、」
全然わからない。
「ユミルはその子とケリーにも英語を教えてあげてね」
「キライ〜」
「まぁまぁ、大丈夫だから。
じゃ、そろそろ行くわ。飛行機乗れなくなる」
「そうか」
「えっと君。次に会えるのはいつだかわからないから俺から一言。
正義は必ず勝つ!
以上。じゃ、ベストファミリー。アンティール、ネクスタイ!」
イッセイは手を降り、車に乗り込んで教会を後にした。
|壽美田《スミダ》|一成《イッセイ》と会い会話をしたのはそれが最後になった。
「…さて。寒いから今日はポトフ」
ケリーは無愛想だった。
教会に入っていくケリーのそれに従うしかない、というか染み付いた奴隷のような本能で彼の背について行く。
こうして、俺の家族が始まった。
ユミルという人間は俺に名乗る前にくんくんと、犬のように臭いを嗅ぎ、「火薬の臭い」と、興味深そうだった。
「…ハジメマシテ…。ユミルです」
とても覚束無い一言。
「…はじめ、まして」
「あぁ、そうだな。名前、まだないんよ」
「…ドシテ?」
「さあ。どして?」
ケリー、ユミル共に興味深そうに聞いてくるけれど素直に「いや、わからなくて…」としか言えない。
「…お前、確かに犬のようなヤツだな」
「…はい?」
「イツミが言っとった。犬のような子供を見つけたから、拾ってこいと」
「…まぁ、」
「お前、ギリシャ神話を知ってるか」
「…いや、」
「そうか。
ハデスがイツミなら、君はケルベロスかもしれない。ハデスとは冥界の神で、」
「…それ知ってる」
「そうか」
ケルベロスは地獄の門番。
3つの頭を持つ、恐ろしい犬。
「…そうか…」
確かに。
わりとピッタリだと思った。
俺はそのまま講堂のような場所に連れて行かれ、「じゃぁな、」と、改まって言われた。
「とにかく、君たちとの話を聞き、俺が知っている君の話をしようと思う。まず、銃を出せ」
そう言ったケリーに、そう言えばそんなもなの持っていたけど、持ってきたかなと頭を過ったが、確かに無意識にきっとポケットに忍ばせていたと、あっさり見つかりケリーに渡した。
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