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「いい加減にしてくれないかな」
ストーカーは本気でウザイ。
相手が美人、しかもスレンダー。
確かに送りつけられてきた映像でシルエットはわかったけども。
ファンサービスで送ったメールとか真に受けてホントにライブ来てくれた、
訳でなく出待ちをしていたようだからお持ち帰ってみたら大変だ。
多分自傷癖、手首に傷がスゴい。職業柄僕こーゆー気が狂った女、無理、隠すように掴んで。
まぁ、でも色っぽい。声が高くて硝子細工のように綺麗で何より。
僕を見る目が空虚で仕方ない。これが、心底を見るようで僕は、好きかも。あのクスリの陶酔に似ていて。
けどなんだろう。
凄くこう、僕はそう、背徳感は好きじゃなくて。
流石にちょっと、可哀想かなとか。
あとは、まぁ、相性良さげだし。
少し話を聞いてみようとしたらなんか話が通じない。
どうしてだろう。
身体しか通じない。
終わってみたら筆談されて納得。
“難聴”
なるほど。
僕はとても悪いことをしたらしい。
まぁまぁ、泣きながらゆったり、時間を掛けて話してくれたら。
そう、調子こいて動画をあげたらまわされちゃって?
ストレスで引きこもり。
難聴患っちゃった。
けど、低音はなんとなく聞こえる。
自分はどちらかと言えば声が高いからたまに叫んで低くしようと、
ダメにしようとしてみたりしてもうまくいかないだなんて。
笑っちゃうよ。
けどなんだろう。
クラゲみたい。
空虚が浮いていく。
「君って頭おかしいけど、まぁ、」
僕に似ている気もするよ。
だからそう。
「気が狂っちゃったのねぇ」
「うぅ、」
でもさぁ。
「あっ、」
僕もねえ。
そんな君の叫びを聞きながら興奮できるくらいには。
「いやぁぁぁぁぁあ」
「大丈夫?」
あぁぁ、快感。
「やめ、や、」
「仕方ないよ、君、君の声。
凄く素敵だよ、音羽」
「いたっ、あぁぁ、」
でも。
よがって空虚な瞳でそう僕を見て。
凄く幸せそうに、八重歯、見せて笑ってくれる。
実はもう。
付き合って4年目とか、君忘れちゃってるけど。
あれかなぁ?
君を一回失神させるまで首絞めちゃったあれが悪かったかなぁ。
「いやぁぁぁ、ん、」
「あはは、スゴい幸せそうじゃない、快感」
「ぅん、はぁ、いくちゃん、」
「はいはい、その捻り潰した声、切れたギターみたいでそれも好きだよ、ねぇ、」
「いやぁぁぁ」
はぁ、
ホントうぜぇ。
誰が?
でも。
「幸せ」
そう。
幸せです。僕たちは。きっと。
「 」
君には聞こえない。
聞こえないんだ、僕の。
「哀しいなぁ」
この、空虚が。
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