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「殺しちまったな」
声が、奥の、
殺し屋の部屋から低く響く。黒いコートを羽織った彼は右手に拳銃を忍ばせているのが見えた。
「殺すか?死ぬか?」
「なっ、」
「一人殺したらもう戻れないぞ切山」
いや、
「こ、殺してなんて、」
「じゃぁ、誰への手向けだろうな、あの命」
誰への。
切山の側まで来て日向は、切山を見下すように見下ろし、黒子の口元を歪め、
「利己主義なんて一番の凶器なんだよこのダニが」
吐き捨てた。舌打ちと共に。
日向のその細められた目は酷く鋭かった。
何を間違えた。
考えてみて明らかなる軽薄な羅列だった。
直訳すれば「君一人の命なんて」と言ったも同然じゃないか。
日向は、黙って俯き腰を抜かしたままの使えない新人に、コートの左ポケットからP226を投げ捨てるように寄越した。
あとは何も言わずに部屋へ戻っていく背中に漸く、「日向さん」と切山は問いかける。
立ち止まったその背に「あんたはどうして」と言うのも一瞬で自分の中に廃れた。俺はどうしたかったのか、それと同じことだと噛み締めた。
「バカにわかりやすく言えば、あの子供は打ち勝とうとしただけだった。結果母親に傷すら遺らないかも知れないがな。死ぬならさっさと死ねよ切山。後々騒ぎになって面倒だ」
あの十字架を背負うのは。
足が震えた。しかし切山は銃を拾って立ち上がり、「すみませんでした」と頭を下げた。
「俺が殺したんです」
ちらっと後ろを見た日向は「あっそ」とだけ言ってまた部屋へ歩き出した。
あの子供が何を求めたか、何を遺したか。生きとし生きられぬ声は刺し違えてしまった。拾えなかった。その事実にショックより、どうにかしなければと切山は漸く自覚を持ち、日向の後ろに着いていった。
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