3
「どうして」
君は、教会を抜け出した時に僕へそう言った。
後ろに着いてきていたユカを見れば裸足で、青い目は怯えたように揺れていた。
「ユカ…」
僕はユカをその場で抱きしめる。すっぽり僕の腕に収まるユカは暖かい。そして君は言う、「ケイは誰なの」と。
「僕は君の、」
「私は貴方を知らないの…!」
何を言っているのかわからない。
空虚な君に僕の記憶をなぞればいいだけだろう。しかし、ここ最近疲れているのかもしれない。僕はただただユカの綺麗な髪をすき、「疲れたね」と耳元で囁く。
ユカの肩が上下していて。
僕は君を泣かせたいわけじゃないんだ。でも、僕も君も完全じゃない。
「ユカ」
やっと手に入れたあの、少女は。
「ユカ…」
僕の希望で、愛で、宗教で、光で。
僕はそのために生きているのに。
ふいにこうして太陽の下で揺れている。僕の永遠は君に熔けていくように。
「僕が完全に熔けてなくなったときは」
そう。
「僕を殺してくれないか」
永遠に。引き裂いてくれないか。
驚いた顔で見上げたユカは、やっぱり泣いていたようで。
その涙を拭って舐めたらしょっぱくて。僕は君のように美しい人間じゃないとふと、感じた。
「行こう、ユカ」
僕たちに与えられた未来まで、
それがどこにあるかはわからないけど。
また手を繋いで歩き出す。不完全なままの二人で。
遠い日の、親に手を引かれて歩いていく君を思い出すようで。僕はそれから大人になったんだ。
カレーの街をひたすら歩く。
防波堤近くの船乗り場にも警察が見える。
また違う道へ引き返して、僕らは先に進んだ。
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