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「キィアアアっ、アアア!」
凍えるような寒さにどこまで歩いてきたかは覚束ない。
灰色の空白に耳鳴りのような、空を切る奇声が響いた。
「ユカ…?」
呼び掛ける頃にはユカが激しく暴れだした。ちょっと、どうしたの、それも届かずに叫び、暴れているユカをおろすと、駄々っ子のように地団駄を踏み、泣き叫び、僕はその気が狂った様に唖然としてしまったのだった。
「違う、違う違う違う!」
「どうしたんだユカ、」
違う、だと思う。喚いているユカに「どうしたの、大丈夫だ」と言い聞かせて抱き締めるのだけど、「アアア!」と騒いでなかなか落ち着かない。
「触、らないで、触らないでぇ!」
「ユカ、お、おちつ、」
舌が回らない。
…崩壊していく。
「誰、誰、誰、あなたは!」
「ケイだよ、ユカ、」
「誰なのよぉ!」
白く、
さようならと言ったあの日のユカがちらついた。
君は今、怖がっているんだ。
「私はユカなんかじゃないっ、」
勢いが、飛び出した。
「…ユカ、ごめんね怖いんだね。昨日もまともに寝れていない」
「違う!」
枯れるように叫んだユカはそれから咳き込み、何かを吐き出しそうに勢い余って咳き込んで。
僕はそんなユカの背を撫でようとするのだけどユカはそれを拒否するように手を振り、尚もしばらく咳き込んでいて。
暖かい宿屋を探さなければ。彼女はこの旅路を恐れている。僕のたはそれだけで震えそうで。
僕は彼女の小さな美しい世界をただ守っていたいと思った。
いくらか強引だったかもしれない。
僕はユカの手を疋相のまま大通りを歩いていく。
ユカは泣いて拒んで、何度も立ち止まるようなことはあったけども、それでも手を取って歩いて、無我夢中で宿屋をさっさと探したけれど。
「私はユカじゃない、」
振り払うのに、
すれ違っている。
振り向いて挑戦的な彼女は僕を睨んでいる。恐れではない、これはなんだというんだ。
「じゃぁ、君は。
どこへ行こうと言うんだい?」
僕は至極笑顔で接しようと、機械のように冷えきった気持ちで彼女に笑顔を向けた。
驚愕に変わる彼女の表情に、「大丈夫だよ」とまた手を引いて、歩いていく。
僕が守るから。
引き返せないところまで僕らは来てしまったんだよ、
「狂ってる、」そうかもしれない。
僕はきっとそれも美しいのだと思っている、思っていたい。あの日の背中が幻覚のように立ちはだかった。
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