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慶喜が惨敗し収集がつかなくなった状態での次戦、甲州・勝沼で、新撰組の近藤と土方が消え、松平容保は会津藩預りを辞している。
それと同時に、幕府側には鎮撫隊と名乗る部隊が現れた。
その鎮撫隊と名乗る部隊の隊長、「大久保大和」という人物がいる。
無血開城という大業を成し遂げた勝海舟。彼は、反幕府思想であった坂本龍馬の師となり“海兵”を育てていたという記録がある。
今や全く表舞台に現れない勝海舟だが、その鎮撫隊は幕府所有の…海兵軍艦、開陽丸を持っていた。
後の奥羽越列藩同盟の締結後に「開陽丸を攻撃することはならない」という幕府側の要求を、現政府は承諾している。
…鎮撫隊に於いてはここまでしか聞き及ばないが、甲州勝沼の戦で消えたはずの「近藤勇」が斬首刑となり、次戦が展開された。
…噂の範疇として、勝海舟がこれらの黒幕ではないかと言われている。現政府ではわりと色濃く残る噂だ。
鎮撫隊が甲府へ向かい、新撰組が事実上の解散となれば、後半戦も納得がいく。
要するに鎮撫隊が現政府の足止めをしようとしたが、先の鳥羽伏見がある。兵力も分散し勢力が足りず惨敗した…。
江戸の薩摩藩邸放火事件や英国の訴訟問題もあり、薩摩は逆境にいたはずだ。
だが海戦となれば案外、幕府の官僚の中でも下の地位にいた勝海舟の目論見が外れた可能性も否めない。
結果論として、これにより慶喜は今度こそ完全にお役御免となり謹慎という名目を得た。
そして幕府軍が部隊長の首を一つ納めているとなれば、彼らは始めからもしかすると…と邪推してしまう。
旧幕府軍は結局今や“逆賊”の扱い。
しかし当の慶喜は謹慎…実質隠居状態。勝海舟は正式に隠居している。
……顔が浮かぶだけ、より、思うことは沢山ある。
道場に行ったとて近藤家は自分にどんな対応をするか…多分、良い顔はされない。
考える。
無駄な柵を捨てられないのは、多分この悪癖のせいだ。自分は考えすぎてしまう。
本当は徳川慶喜が退却した時点で終わればよかったものを、本人だか周りだかが反発して、この現状とは…。
まるで人柱だ。
…だが、悟りの先は空。
縋らなければ仕方がなかったのかもしれない。皆それぞれ抜いた刀を鞘に収めずに捨ててしまっただけ。
破壊と解りつつも退くことが出来ない状況なら、進む以外に道はない。その気持ちを考えると…懐の鉄扇を握ってしまう。
少なくとも、自分が出会った北海道の人達は「成し遂げた」と言っていた。それだけで、無駄ではなかったと言ってやりたい自分の利己があるのも承知だ。
命が終わればどんな形であれ、そうなるのだ。彼らは空となった。
はっと気付いた。
おかしいな、建設途中の内務省を眺めていたような…政府領地をフラフラしていたはずが、ここは區だろうか町だろうか…。
江戸の頃もそうだったが更に、現東京府の土地勘がない。
…随分拓けてしまった気がする、広くは見えるが当時とも少し違う。
…店が減った。
というか、だから気付いたのか、この廃れ具合。職業病だ…ついつい商店街跡っぽいところに来たらこれだ。
概ね、この廃れ具合は長屋の地主、大地主にも法案に対する令が下った、だからこうしてガランとしている…つまり、持ち主たちはあまり触らず次の法令を待っているのだろう。
昔より宿屋も減った…昼をとうに過ぎてしまったな。うーん、どうしよう。
街並みは変わったがなんとなく見たことがあるようなないような…こんな雰囲気だった気がするぞ…寺やらなんやらがある地帯と少し違う感じ…。
江戸の地図を眺める。
ここ、恐らくは政府領地のすぐ側だ。
牛込󠄁區。
こうして見ると、昔は廃れていると見えていたが案外、栄えていたのかもしれない。
まぁそりゃそうか…旧江戸城付近、現皇居の宿場だ、拓けているのは当たり前で…。
やはりあの時、沖田には一本取られたな…従者はかなり姑息な手で沖田を負かしたが。
そういえば沖田はどうしたのだろう。
流石にもう…いないかな。
こうも区画整備されるとピンと来ないものだが…そもそも、自分たちはこの土地に半年ほどしかいなかった。
商店街…確かにそうだ。
この際だからと探してみるが、道場はなくなったんだよな…。訪れたのもたった二回だ、あまり正確な場所を覚えていない。
近くに寺もあったな…。
結局フラフラしていると、見慣れない、大きな麹工房が見えてきた。
こんなに奥まった道に…?
表に卸すのだろうか…しかしデカイな、商家ならこんなもんか…?
向かい側には…医塾?
確信に近付いてきた。もしかして、道場跡に店でも入ったのかもしれない。
あの連中があんなにあっさりと京へ来れたのはもしかすると…借家だった可能性がある。食客もいたわけだし。
…有り得るな。充分に。
少し覗こうかと近付いてみると、店主らしき男と、桶を持って出て来た客がいる。
まあ、よくある風景だろうが…。
桶を持った男と目が合った。
店主と親しげに話していた男はふと、驚いたような間を持つが…。
ころっと表情を変え、睨むような冷たい真顔でこちらを見返してくる。
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