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「お前はタバコだったよなぁ」

 角刈りツヨシくんに睨まれた。
 急に来た展開に修介は一瞬気後れし「えっ?」と間抜けな声を上げるしかない。

「ちょっと貸し」
「いや、普通のワカバですけどっ。親父の」
「は?」
「買ってこいって、自販機で」
「自販機?」
「どれ、見してみぃ」

 ワカバになんかやべぇことってねーよな?とヒヤヒヤした頭で考えながら恐る恐るツヨシくんに渡すと、ツヨシくんはそれもくんくんと嗅ぎながら「あぁ、ワカバですね」と初老に告げる。

「じゃあラリってないね、君、お友達の通訳してくれないかな」
「えっ?」
「この子達がどこで誰から買ったか聞き出して欲しいんだけど君は知ってる?」
「いえ、全く」

 おい瀬戸!と無駄に大内が吠えたせいで、サトルくんの方にも睨まれてしまった。

 ちゃうちゃうちゃう、マジなんも知らねぇんだよ、マジで。

「マジで知りません、俺は!それは親父からくすねたやつです!」
「君のお父さん渋いねぇ、ホームレスみたい」
「はいパチンカスなんでっ、」
「そうかいそうかい。三丁目のコンビニってどこ?」
「…どこだ大内」
「はっ、いや、コンビニですあのガソスタ前の!あの、」
「あーわかった青い看板だ。あの辺ね」
「あの辺だとウチの管轄じゃないっすね」
「うぅ……あの、タクロウさんって人からぁ!」

 大内が泣き出してしまった。

 誰だタクロウさん、本当に知らない人だなと思えば、ヤクザ共も「タクロウ?」「誰だ?」とこの調子。

「まぁいっか。それはごろつきかなんかなの?」
「いや、えっとわからな」
「バイク乗ってる?」
「えっ、はい」
「めんどくさそうだな、どうしよっか」

 初老がつまんなそうに言ったとき、障子の側にいたサトルくんが「お、イッテツ」と廊下に声を掛ける。

「お帰りなさいませ若。
 イッテツ、三丁目のコンビニ知ってるか」
「はぁ、」

 障子から長身のポマード、傷の強面が覗き込み、「只今戻りました組長」と挨拶をし、じろっと状況を眺める。

 「あぁお帰りイッテツくん」と初老はひらっと手を上げた。

「わぁ、お帰りハルカ!」

 そしてすぐ、部屋を覗いた同い年くらいの若い、違う制服を着た、確か中央高、超頭良い、その人物に初老はにこにこ、全く今までのはなんだったんだという笑顔で声を掛けた。

 女子かと思った、女子かもしれない。いずれにしてもあまりの場違い感に、修介は眼鏡を疑った。

「ただいま。
 何これどうしたんですか」

 ゆっくりと喋るその低音は非常に聞きやすかった。そして、取り敢えずあれ?とよく見ればブレザーはズボン、つまり男子だったと認識する。

「あぁ、そうそうこれ、丁度お前が通ってるの、三丁目じゃない」

 初老が少年に袋を渡そうとするのを、「いや、組長、」とイッテツくんが難色を見せる。
 「お前はわからないでしょ」とつんけんとして返す初老に頷いた少年は、少しだけ袋を近付け「うーん」と考え始めた。

「科学薬品?混ざってるの。メタン系の。
 三丁目だっけ。あの辺は吉田かな、工場押さえてませんでしたっけ、あいつら」
「流石ハルカだね。
 ツヨシにサトル、吉田関連の走り屋当たってこい。ついでに「今時遅れてんな、落ちたね」って伝言ね」

 はっ、と返事をしたツヨシくんとサトルくんは頭を下げながら広間を出て行く。
 そして、残されたイッテツくんとハルカは残された男子高生4人を眺め、ハルカが指を差し「これは?」と初老に聞いた。

「あーうんそうねぇ。イッテツくん晩飯は家内に任せてくるよ。ハルカとこいつらと遊んでやって、倉庫で」
「はっ、」
「遊び足りないみたいだから。じゃあね、座ってるの疲れたから戻るよ」
「えっ」

 イッテツが唖然としている間に初老は本当に去ってしまった。

 目の前の事象に気を取られていたが、すぐそばで「やべぇ…」「殺される…」と取り巻きたちがビビっているのに気が付き、漸く自分も「あれ、ヤバイかもしんね」と自覚し始めた。

 運命を握るハルカ、イッテツは目を合わせ「そう言われてもなぁ…」と首をかしげている。

「取り敢えず、なんか突っ込んどくか」

 淡々と言った春夏の言葉になんだそれは、という空気が流れたが、溜め息を吐いたイッテツが

「堅気は殺せねぇんで、取り敢えず夕飯前に倉庫来てくれませんか」

 と自分達に言った不自然さ、この時点で一同から悲鳴が上がるほど限界だったが、どうしていいか…と、結局倉庫まで連れて行かれてしまう。

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