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 …ホっとしたぁ。

「あ、いや、えっと俺じゃなく営業部の…3でしたね、発掘は。私は厳選しかしないので」
「3ね、3。ラブレターちゃんと書いてあげなきゃね」
「はい。よくやりましたよ、ホントに…」
「じゃ、気分も良いし今日はゆったりしよっか」

 はい…と当たり前に返しそうになったがはっとしつい、「はい!?」に変わってしまった。
 いつも通りなら金曜日だし多分このままお泊まりで、という流れだけども。

「何?」
「いや、」
「早く部屋行こ。ダメだなんかどっとキた今。疲れたみたい」

 …今週は確かにハードだったなぁ。

 しかし社長は「疲れたみたい」とは裏腹に、部屋を開けた瞬間くらいには律を壁とし、熱烈なキスをしてきた。

 いや、壁に髪はないからくしゃっと撫でられないだろうし壁を舐めたら変態だろうけども。律がもし逃げたくなっても後ろは壁だ…。

 息切れする…けど、力が抜け名残惜しくも「しゃちょ、」と微妙な呂律で一度社長を引き剥がすと、社長は飲んでもないのに眠そう、だけど強い目をしていて。

 あぁこのギラギラしたやつ、好きなんだよなぁ……。

 と、染々思ったりして。

「俺さ」
「…はい?」
「“我が社”とか“優秀な社員”とか言われると、興奮するんだよね」

 そんな知られざる性癖を、再び舌を絡められそれにちょっと夢中になりそうにはなるが、顔を反らし「知らなかった、そんなせいへきっ、」とついつい反抗してしまう。

「性癖ってゆーかぁ」
「あぁ、はいぃ…」

 一言喋るとキス、みたいな状態でもうどうしたらいいのかと…頭に色々流れ込む。
 そのまま流してしまえば楽だと、わかっている筈なのに。

「りっちゃん」
「っ…はいぃ」
「今日カッコよかったよ」
「っ………はい、」
「日曜日までに変更したから」

 ん?
 宿泊を?

 社長に右手をさらっと掴まれさらっと股間に誘われたが……少しか反応もない、どちらかといえば疲れて戦闘力もない状態。

「ゆっくりしよ?」
「…んん?」
「いつも土曜で帰っちゃうじゃん?たまには…だって疲れてるし眠いし…」
「え、あぁ…」
「あ、でも月曜もあるから、日曜には帰って…」
「はい」
「風呂入って寝よ…」

 パッとネクタイを弄りながら離れて行く社長が「風呂俺が入れるわ」と言うが、反射的に「お、俺がやりますよ」と提案してしまう。
 しかし「んーいやりっちゃんは座ってて」と制されてしまった。

「あ、ビール入れてあるよ」

 社長はいつでもマイペース。

「いえ、流石に…社長、ふにゃふにゃしてますし、お疲れでしょう?」
「いや、いーの俺がやるって決めた拘って」

 拘って風呂洗うって何。ラブホでもないただの風呂だよ?ヤバイな社長。

 ぐるぐる考えたらなんか、沸々と笑えてきてしまって、「じゃぁまずはビールを」と冷蔵庫を開けたのだが、何故かビールは一本しかなかった。

 多分ミスだな。でもいいや。

 律は水とビールを持ち、とにかく社長には一度座って貰うことにした。

「…あれ?りっちゃんはいいの?」
「あーいいです。さっき焦りすぎて水分が全然足りないので」
「ふーん、そう」
「お疲れ様でした社長」
「りっちゃんもお疲れ様」

 はぁ、と一息吐いた社長は「よし、」と、結局忙しなく風呂を洗いに行く。
 社長というものはいつだって忙しい。

 お風呂上がり、ビールいるよなぁと、ごしごしをBGMにこっそりとフロントに電話もしておいた。

 満足そうに風呂に入った社長はすぐにベッドで寝てしまった。

 律は社長を起こさないようにと、こっそりソファで寝ようと思ったのだが、「りっちゃんこっち、」とそこは起きて指示をされてしまった。
 従えば、律を抱き枕状態にした社長は「りっちゃん……風呂上がりなのに…俺より冷たい……」と寝たようだった。

 俺も今週は疲れたし…。
 でも、ズルいなぁ社長。ほぼ最後のつもりでこれじゃぁ…。

 でも、ホントに辞める、そう、あぁでも今後のこととか、考えてなかった。ただ、やっぱり女々しいんだろう、こうなって急に感慨深くなるなんて。
 いや、感慨なんて、こうでもなければ起こらないものかもしれないけれど。

 情けなくも少し泣きそうになっている自覚もした。

 「りっちゃん………熱い……」と、寝言なんだかなんなんだか。ただ、律はそのどうしようもない感情に任せ社長の額にキスをして就寝した。

 そして土曜日は「だって、火曜日で辞めたいんでしょ」と、腰が抜けるほどゆったりとベッドで過ごした。

 こういうのはあまりなかったかも。

 流石に木曜の件があったので「撮らないでくださいね」と社長に釘を刺したが、撮るも何もベッドで物凄くイチャイチャバニラセックスしただけというやつで、絵面も映えも何もないものになった。

 「はい、じゃーね」と日曜日にはあっさりと帰り、考えた。

 火曜日で辞めたいんでしょと然り気無くはっきり言われた。どうやら社長はちゃんと意味を解釈してくれていたようだ。

 こうして、「いついつまでに別れよう」みたいなことはきっとそうそうない、というかもう、恋愛すら、ないだろうと思う。

 あろうことかここまできて、かなり名残惜しくなっているのだから、自分はやられてしまっているようだ。

 でもやっぱり、これが良い筈だと…それも言い訳じみるのか、というところまで頭がまわることも、切ない要因のひとつなのかも、しれない。

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