第二章(混じり、白痴文) 2
それから 何回 夜 が すぎた か わからない。10回 かも しれない もっと かも しれない。
カイン が わが家 に やって 来た。
とおさん と 手 を 繋いだ カイン は とおさん に にて ブ愛ソウ な 男 の 子ども だった。
ままは カインの かおも 見なかった。
とおさんが カインに 笑いかけた。初めて見た とおさんの ひょうじょうに ボクは 笑っていたと 思う。*****はだれにでも愛されるから。
とおさんが 膝をおって ボクを見て 頭をやさしくなでて やさしいかおで「今日 から おにいちゃん だ。カイ、あいさつを しなさい」と カインに云った。
ボクはカインを愛すのだろう。
カイ は ボク を じっと、なんだか 怒った かお を していた。それから そっぽ を 向いて「キモチワリィ」と ブス ッ と 云って。
カイは ままに 怒られた、ほっぺたを たたかれた。
ままの初めてだった。
まま、まま、
そんな こと は してはいけないよ。
ボク は ***** を 愛し、***** は ボク を 愛さ ない。それは あの 絵本 じゃ ないか。
僕はこの兄に殺されるのだろうか。
カイン、そうだね カイン。
僕はあの時に 初めて自由になった 気がしたんだ。笑ったボク に ままも父も驚いていた。顔に「キモチワリィ」と 描いてあるようだった。
カイはそれから僕のカインになってしまったのだ。
母はカイを「可愛げの無い子」「愛じんの悪い子」と 蔑み、カイを 居ない物 として外へ出した。カイは僕とは ちがい、びしゃびしゃで「がっこう」から 還ってきた。
げんかんで寒そうに座って居るだけのカイの一緒に僕は座って「カイ、お還り」と毎日話かけた。
カイは三日は黙っていた。「ナンダヨ」「アッチイケ」「キモチワリィ」と毎日云われた。僕は黙って笑っていた。
三日がすぎて「弟」と呼ばれた時、僕は*****なんだ、と思った。
「弟、名前はなんてゆーんだっけ」
名前 は なんて ゆーんだっけ。
「りゅーた」
「りゅーた?字は?」
アベル は 読み 書き が 出来る ゆうしゅう な 子ども だ。
「アベル」
「は?」
「アベルだよ」
「何?」
理解されて いない と 感じた。
「アベルは読み書きが出来て優秀で皆を愛して皆も大好きで漢字も計算も出来て」
「りゅーたってかん字はどうかくんだよ」
「りゅーた?」
「おまえ、どうしたんだ?」
理解 されない。
カイがふしぎそうにボクの顔をノゾいている、リカイされない。りゅーた?アベルは漢字がとく意でけいさんも出来るんだって、いつも笑顔で
「どうしたんだよお前、」
びしゃびしゃのカイが にじんでいる。キモチが わからない、理解 できない。カインは アベルが だい嫌い で、ころしてしまうんだ。手 が かお に 近くなった とき に ボク は 思い出した。
「ころさないでよ!」
初めて こんな 声 を 出して。
ぱしっとした音、手が痛かった。アベル に ふりまわされ ゆか に はたかれた 音 と 痛い と 冷たい。
僕は急に ここが 玄関なんだ、大理石の、そう思い出したら笑えなくなってしまった気がした。
「どうしたのりゅうた!」
オレンジ色に なる、もう少しで 夜になる、母が ヘヤからここにいるのは いつもと違うことだけど、
「あんた、何したのよ…!」
ままが怒っている。そうか、まだ 夜じゃないからだ。
床 が どんどん した、母 が 近く に きた、
カイ が まま に はたかれた、カイ が 床 に からだ を ぶつけた、母 が カイ の 上 に 乗って、叩いて叩いて叩いて ボク は、
「それはしてはいけないことです!」
僕は母に叫んで、背中をぎゅっと握ったけど。
僕を見た母の顔は鬼のようだった。愛じゃない顔だった。
だけどすぐに ボクに 笑って「そうね、良い子ね」と、カイから 離れた母が 抱き締めて くれて。
海は痛そうに起き上がり、驚いて僕らを見つめていたのが今でもはっきり思い出せる景色で、僕は笑っていようと、母を抱き締め返して海に笑ったのだ。
悪い子供のカインは良い子供のアベルを殺すのだ。*****は愛されない、*****は愛され甦る。
海。
僕は君がいつかやってきて羊を差し出す僕なんかよりも食べかけだが上等なの作物を神に奉納しやっかまれ、愛されずに育つと知っているのさ。そうやって人間は出来る、そういう人間は出来る。君はそれで良い子だと僕は思うよ。
だってボクには それが 出来ないから。
字も計算も話すことも外に出ることも学校に行くことも泣くことも笑うことも愛されないことも憎まれることもなにも出来ない、そんな窮屈がいくらでも許される鳥籠の中の羽根もない鳥と一緒、一緒、同じ、皆皆かわらない愛を、エゴも哀れみも下心もすべて全身にぶちまけられ息を殺される、こんな気持ちは君が居なければいなければ味わうことがないんだよ、大人も子供も変わらない変わらない変わらない、一緒なんだよ、
カイは ままを 「かあさん」と 呼んでいた、とおさんを「父」と 呼んでいた。ボクを「琉太」と、はっきり呼んでいた。
愛すべき僕の家族。何者にも汚されないこの鳥小屋は、僕の輝く美しく何物にも変えがたい、いとしい、夜と昼と、世界だった。
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