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後頭部を掴まれ「はぁ、あぁ、スッゴい良い、」と、まるでレイプ状態になっていた。
この人は、こういうのが好き。
なのに「痛い」だの「止めて」だのポロっと口走ってしまうと、なんで?ねぇなんで?もうちょっと?と、正直かなりなヤンデレサイコパスの人。
こっちはなかなかイけもしないのにこれがしつこく続くから、毎回かなりの体力を使うのだ。
ふとシャツを捲られ、傷に触れられた瞬間、意図せずギリっと身構えてしまった。
「アカリちゃん、脇腹好きだよねぇ、この傷、ねえ?締まるよねぇ?」
違う。
それはそうじゃない。でも確かに、ぞわぞわしてしまうのも事実で。
そこで一度、イッてしまった。
もうこの時点で立っていられないかもしれない。その状態でやっと、ベッドまで連れて行かれる。
頭はまわらないし頭痛薬を飲んでも意味がなくなってしまった。
それから何時間かはもうわからない、そんな状態でベッドの下から…アラームではない、呼び出し音が鳴った。
「何ぃっ、」と、五反田はとても嫌そう、ヒステリックに眉を顰める。
「…ごめんなさい、五反田さん…。
次、次入っちゃったかも、あの、金曜日、だから…」
アカリが切れ切れに言うと、五反田は掴んでいた足をまるで放り投げ「チッ、」と舌打ちをした。
あぁヤバイ、今立ったら出てくるしそもそも立てないかもしれない。
五反田はテーブルに置いてあった自身の財布から二万円を出し「早く出れば、」と乱雑に投げつけてくる。
仕方ない、ちょっと頑張って電話を取ろうと考えたがまず、足が震えているようだ。
ベッドだと尚立てないな、こいつすげぇ、超出してたよね何回も……と、多分頭に血の気も残っていない。
見兼ねたのか煩わしかったのかは知らない、シャワーを浴びるついでだろう。
五反田は「はい、」とアカリの上着を投げ寄越して去って行く。
取り逃がしたかもなと、時計を見ると案の定、0時は回ってしまっていた。
上着のポケットからケータイを取り出し「はい……」と返事をした声が、桜木に聞こえたかは不明だった。
『次』
無愛想にそれだけ言う桜木に、「…少し待てる?」と正直に答えておいた。
『どんくらい』
「わかんない…いま五反田さんがお風呂入った」
『なんで』
「少ししたら…俺もそうする」
『今は』
「……てない、」
濁した。
『は?』と言ったのを聞き電話を切る。
ちょっと、あとちょっとだよなと、這って降り壁伝いで風呂場まで到達し「すみません」と笑顔を作る。
床は汚したかもしれないがそれは五反田にお願いして帰ろうと思った、我ながら意識が低い。
五反田はヒステリックを和らげ「大丈夫?久々でごめんね」と悪びれもなく風呂でもイタズラをしてきた。
更に長くなった、正直この絶倫さには驚く。これは確かに女性ではキツいだろう。
リステリンも軽くしか出来なかった、具合が悪くなったのだ。
最後はきちんと2時間分、24,000円とチップを5,000円ほどくれた。
一応、ちゃんとすればそういう人。
流石に時間が掛かったせいか、精算をしていたタイミングで桜木が部屋まで迎えに来てしまったが、五反田はこれには愛想を悪くはしないらしかった。
「では、また」
扉を閉めた瞬間力が抜けたらしい。灯は膝からがくっとしゃがみこんでしまった。
自然と桜木の肩を借りる。
「大丈夫か」と言った桜木に、少し驚いた。
「…ちょっと、下、寄って」
「どした」
「なんでもない、トイレ」
「あー、はいはい」
そして桜木に背を摩られながら一階のトイレで嘔吐いた。胃まで痙攣している。
端から薬しか飲んでいないし胃液以外に何も出ない。
「…次って、」
油のような汗が噴き出す。冷たい汗だった。
「あーまぁ、まず乗れ」
そう言って桜木が開けてくれたのは後部座席で、痛かった後頭部を支えるように寝かせてくれた。
「ね、次って…?」
「あーね、」
何も構わないように桜木は茶を口に含み、わかる、口移ししようとしてるのだ。
灯が拒否して顔を背けても、それを追ってまで飲ませてくるのだから、力なくも桜木の背中をぶっ叩きまくった。
なのに、ゆっくり、ゆっくりと注いでくるのが泣きたくなる。
「…やめろよ、」
何も言わないでそのまま運転席に戻る桜木に「吐いたし出されてっから」と告げる。
「規約違反だな」
桜木は涼しい顔でハンドルを握っていた。
「…口は別に」
「そんだけならな」
「………!」
言い返せない、元気もない。
「寝てれば?始発くらいまで」
「……なんで?」
「次とか、あるわけねぇだろ」
…じゃあホントに。
「…なんでよ、」
「は?」
「電話」
「予定つかねぇと迷惑なんだよ」
「…いいじゃん、始発になったら勝手に帰るよ、」
「うるせえな寝てろよ」
「送迎は」
「あ?」
「あんたどーすんの」
「寝るに決まってんだろ」
何それ。
「大体そんなんで客んとこ連れてけるか、無理だよなぁ?」
「でも嘘なんでしょ」
桜木はふと黙ったが、「そうだ」と一度呟きハンドルを切る。
なんとなく、また道を戻ったような気がする…疲れは出ていた。
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