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「……あの、さ、」

 舌が縺れる。

「なんだ」
「車から」

 沈黙になってしまった。

「車から、出たら…タイマー入れて」

 言い直す。

「…ん」
「あの人、中断嫌みたい」
「…一応言っとくけどまた一時間で取ってるぞあのブタ」
「ブタって言わないで。お客さんだから。わかるでしょ」
「タイマーなんてお前で入れろよ」
「そんな暇ない。この前ホントは2時間だったから。部屋に入った瞬間なの、マジで。だからもう俺が車降りるのと大差ないから」
「…はぁ、あっそ。何言ってるかわかんねぇよバカなんじゃないの、お前」
「うん。電話も次入るまで掛けてこないで。マナーモードは解除しとくから」
「…何日だよそれ、永遠かよ」

 今度は桜木が不機嫌になる。
 それだけでかなり気分がよくなった。

 ついでに今度は、ダッシュボードから頭痛薬を取り出して飲んだ。
 横目で見られる。

 こっちは顆粒だ、「ずつぅ薬だぉ、」と舌足らずになってしまった。この薬、舌が痛くなるんだよなとか、そんなことを考えて。

「ご新規前に飲んでたんじゃねぇの?」
「知らないの?性交時頭痛。飲んどかないとプレイ中に痛くなって萎えるの。まぁ別に良いけど、俺は勃起してなくても」
「…ふーん」
「痛くなったらすぐセデス〜」
「頭悪っ。なったらかよ」

 それから無言で新宿のビジネスホテルに向かった。

 正直、桜木がタイマーを入れたかなんて知らない、まぁないだろう、他に送迎もあるわけだし。

 五反田は有名な電子機器メーカーの社長だ。収入もえげつない。だからこそ週一か二で遊べるのだろう。

 本来なら初回でもなく、120分20,000円を延長しているし、あの人は一時間12,000円と、いつの間にかオーナーが高くしたのだ。
 計上出来ていないとしても…二時間月4だとして単純計算で一月最低96,000円。
 自分なら無理だ。

 一応入り時間くらいは確認した。21:48。

 まぁ、22時か…てことは何時に帰れるか、ホントに終電なくなっちゃったりしてな…とぼんやり思いながら、灯はトントンと戸を叩いた。
 ラブホじゃないし、フロントを通った時点で自分が来ているのなんて、相手も承知なのだけど。

「こんばんは、オリオンのアカリです」

 返事はないけど部屋に入った。念のためにこっそりストップウォッチくらいは入れる。

「アカリちゃん!いらっしゃい!」

 五反田はテーブルでピザを食っていた。

「ご指名ありがとうございます、五反田さん」

 靴を脱ぐ、までは出来た。

 五反田は食いかけのピザを置いて「待ってたよぉ」とドタバタ、粘っこい甘え声で玄関までお出まし、すぐに抱きついてきた。

「ん、どうも、どう…」

 あやすように五反田の背を撫でると、早速壁に押さえつけられ脂ぎった口で首筋を舐められる。
 早急に、自身のベルトをカチャカチャと外し始め、「お風呂は…」と言っているうちに股間をすりすりと、股間に擦り付けられた。

 あぁ…始まった。

「五反田さん…、」

 はぁはぁと犬…鼻息も混じり正直ブタのように「ねぇ、ねぇ、」と見境がない。
 スキニーの上から股間をねっとりと撫でられる。

 確かに、さっきの不完全燃焼がある、触って貰った方がこの、生理的に無理なタイプはやり凌げるのだけども。

「アカリちゃん……今日も可愛いねぇ」
「五反田さん…お風呂、入りたいな、」
「その前にちょっと、ねぇ、俺待ってたんだよ、俺は入ったから気にしないでよ、」

 汗の匂いとかめっちゃするけど…。

「んん…あの、」
「アカリちゃん他の男のとこ行ってたよね、ねぇすぐ入る?ねぇ、」
「うん、そうだけど、じゃぁあの…ねぇ、これ、まだでしょ、ちょっと待って、」

 超圧。押し潰されそう。

 こんな時、背が少し小さいのは役に立つ。
 すっと下にしゃがみ「これ好き」と言いながら息を止め、まずパンツの上から咥えてやった。

  「あ、もう〜エロいなぁ」と、圧死は回避出来たのだが頭をがしっと掴まれ、イマラ状態になってしまった。

 でも、まだマシ。歯とか立てて食い千切りたい衝動はギリギリ抑えられる、これなら。

 ただ少し噎せそうだった。

 暫くは我慢が出来たが、やはり一度「かはっ、」と顔を背けて咳き込んでしまう。

「ねぇ、もうヤバイから立って?」

 少し睨んでも相手は見ていないのだ、ニコニコと鼻の下が伸びている。

 立って?ではなく、腕を掴み上げられ、力ないままスキニーごと下げられた。
 そして後ろ手に取られ即、挿入される。

 それもまだマシだ、そんなに質量がない。
 が、抜き刺しじゃない、思いっきりガツガツ突かれるし、そもそも押さえつけられてもいるから床オナならぬ壁に擦られる、それはわりと痛い、勢いがあって。

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