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 大変不謹慎なことに、若干エロい夢を見てしまった。

 目を開けて加東の健やかな寝顔を直視した瞬間、カッと熱くなり困る。
 そんな昇に加東は「おはようございます」と目も開けず言った。

 …俺も元気だなおい。そして猿か全く。

 いや、位置的に気付かれてないかもしれないよなと過ったが、昇が返事をしなかったせいか「夜からって凄い」と、パチッと目を開けた加東に脛をあてられたので間違いなく気付かれていたと知る。

「…おはようございますすみません」
「いや、別に良いです…て、謝る感じなんですね?」

 そう詰められると「いや、全く違います」と、まるで自動翻訳機と化してしまう。

「…なんだ、残念」

 脛を退かしはわわ〜と欠伸をした加東に罪悪感が沸く。
 なんせ衝撃暴露の後だ。

 かなーり衝撃的で超心にきてホントマジでメンタル死ぬかもしれないというくらいの悲しい話をされたというのに、なんせ昇にはカッコつけたことを言った自覚もあるし。

 いや、メンタルがマジで瀕死になり防衛本能というか繁栄本能なのかもしれない。とか、免罪符をつけるのもおかしい。

 加東と寝る夢を見たのだ。
 しかし……不思議だ。かなりエロかったとしか昇は覚えていない。
 じゃあ例えばそうなった、なりそうなときに超重要要素になるだろう股関だ。竿であったか…なかったか…。

 想像が付かない。
 そこだけモザイクというわけではなく、なんだかぼやっとしている。
 素股までされたくせに想像力が欠如している、朝だからかもしれない。

 これかなり重要な気がするんだけどなんせ女しか抱いたことないし。想像も出来ないまま夜勃ちから朝まで継続したらしい。

 客観視する。

 じっと見つめる加東は「大丈夫ですか?」と素っ気なかった。
 昇のメンタルは正直、かなり大丈夫ではなかった。

「うんまぁ大丈」
「溜まってました?」

 あぁもう、天使と呼ばれるヤツからこういうの聞くのも地味に心に刺さる。俺はなんだ、アイドルはうんこじゃなくイチゴ理論とか完全否定派だった筈だがなんて情けない。

 自戒の念に至る。

「あーそっちはマジで大丈夫生理現象ですからってお前もわかるよなぁ!?」
「ええまぁそうですね」

 ついつい免罪符を叩きつけてしまうが、相手の感想は「ですよね」程度。

「あわよくばとか思ったんですけどまぁ良いです。朝ご飯って何かありますか?」

 あ。

「いや、ないわ…」
「僕は食べないんで良いんですけど…お米とか炊いても時間間に合わないかなぁ。いつも買ってるんですか?」
「あ、うん。そう」
「じゃあいいか」

 ベッドから降りた加東は「あ、紅茶はあったんでしたっけ」と…意外としゃっきりしているらしい。
 というか、本当にちゃんと眠ったのだろうか。確かに眠りについたのは…それを見届けてから寝たというか、それに安心して昇も寝落ちしたのだが。

「あーうん」
「入れましょうか」

 にやっと笑った加東の表情が…いつもの営業スマイルよりどこか大人びているというか、素っぽさがあるように見え、ついついおっ、と意識してしまった。
 どう違うかと言えば、わからないのだが。

 昇がまだ起き上がれないのも加東は充分承知したらしい、「勝手にすみませんね」と、キッチンを漁り始めた。

 …やっだー、何あの表情、ちょっと、何。

 我ながらキモいヤツだと昨日くらいから認識している。
 驚いたというか、若干混乱はしているらしいなと、自分のテントを見て思った。

 …とても、悲しかったな。

 恐らくキャパシティを越える驚きだったのだ。

 自分のまわりにそれほど、超ド級のどうしようもない悩みを抱えている奴がいるという実感も、ましてやそれが加東だっただなんてことも、それを聞かされるということも、想像したことがなかった。

 自分は至って平々凡々だとも、思っている。
 だから、その話はどこか夢物語のような気がしてしまう…のに、でも、苦しそうな表情、悲しそうな表情、手首の傷。
 その経験をどこか遠くの事のように加東が語ったという“リアル”はそこにあった、目にした。

 だからこそ想像が難しかった、平凡な経験則では加東の気持ち、自分の混乱をも計り知れなかったのだ。

「…先輩?」

 ひょいっと、加東が部屋を覗き込む。
 …何故普通そうなのか。リアルが非リアルに犯されそうで、心が付いていかない。

「大丈夫そうですか?」
「…あぁ、」
「起きられるときに」
「うん…」

 ぱっと起き上がると、血流が下にいってしまっただけある、少しだけ血圧の低下を感じたが、まず、自然と「加東、」と声を掛けていて、次にはぎゅっと抱き締めていた。

「………っぇ?」

 驚いているらしい。
 間があり、「先輩!?」と、…早い鼓動が直に聞こえてくる。

「……安心する」

 はっとした。
 しかし声に出せば、あぁ、安心するんだなと自覚が出る。

「……は!?」
「んーまぁ気にすんな……メンタルやべぇんだ実は。生きてんなぁ……」
「…あぁ、」

 まるで恐る恐る、だろうか。
 ぎこちなく加東の手が…頭を撫でてくれたのを感じる。
 そして穏やかに「すみませんね…」と言う加東に「うん…」と返事をしてしまったが、違う。

「いや、謝んな。マジでそれが一番クる…」
「…悪い夢でも、見ちゃいましたか?」
「…それが、めちゃく…ちゃ、良い夢」
「あ、そうでしたね。紅茶飲みましょ?」

 まぁ、そうだな。

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