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「…えっと、俺はアレ…クラブ17で手に入れましたが…。あんまりなんか関係ないというか、テキトーにバラ撒かれていそうな感じでした」
「しかし珍しいな、新しいところ?」
「あ、はい。わりと」
冷めたかはわからないが砂糖を一つ入れ、ミルクは先程より多く入れてみた。
江崎はぼんやりとそれを眺めながら「最近どーだ?」と聞いてくる。
「昨日、江崎さんがくれたやつ、使いました」
「お、どうだった?」
「…まだあんまり上手くは出来ないけど…前より良いです」
少し表情を緩めた江崎は「そっか」とコーヒーを飲む。
江崎がカップを置くのとほぼ同時にタマは伝票を取る。
しかしどうやら、こちらが飲み終わっていないのを察したらしい、「まぁ来たばかりだろ」と江崎はタマを制していた。
「お前、甘いもん好きだっけか」
江崎の視線に「まぁ、はい…」とタマは気まずそうに答える。
あまり好きじゃないのかもなとピンと来たので「あ、飲み終わりましたよ」と、少し冷めてきていたコーヒーを飲み干した。
今度こそ伝票を持って会計に向かうタマを眺め、「別によかったのに」と江崎は呟いた。
「…二杯目ですし」
「あ、そっか」
「きっとタマさん、甘いもの苦手ですよ、カイチョ、」
「…お前は流石だなぁ」
席を立つ。
然り気無く「会いたかったよ」と言う江崎に「昨日聞きましたよ」と返しておいた。
少し振り向きニヤッと笑った顔は会長のものではなかった。
会計を済ませるタマの向こう側に向け「ごっそーさん」と言った彼に続き、自分も店員に少し頭を下げた。
律儀にレシートを畳んだタマも後に続き、コインパーキングに停まる飾り気もない国産車の後部座席に江崎と乗り込んだ。
「……会長、思い出しました。そういえばヤナセ、最近ヤケに客入りが悪いと」
ハンドルを握りながらすぐ、タマはそう切り出した。
「…確かにそうだな。地域開発にいきなりぶち込んじまったから多目には見てたが…。どんなヤツが持ってたんだ?」
「どこにでもいるサブカルっぽい女の人でした。水色の髪の。誘い文句も如何にもな感じで、巧妙なわけでもなかったです」
ポリ袋を渡し「こう見えてシャブ系」と付け足した。
「新天地でテキトーにバラ蒔いてんだろうな。こっちじゃ報告、上がってねぇよな?」
「そうですね」
「平良はその辺どうだって?」
「今日持ってったけど…江崎さんの出方は気にしてましたよ」
「まぁ、互いに都合良いか。けど、部下の指が一本飛びそうじゃあ仕方ないよなぁ」
「確かに指は可哀想。
その女の連絡先…SNSも交換したので、IP解析してみるって言ってました」
「なるほど、じゃあ待ったなしかな。
タマ、ある程度行ってよしと、ヤナセを動かしといて欲しい。上手く行けば出世だ。新参洗えば出てくんだろ、何かしら」
「かしこまりました」
「あの陰険腹黒野郎には「ウチは善良な市民なので地域開発の区画整理でもしときますね」とでも。女とのやり取りがあればコピーさせてくれ」
「はーい、今送りまーす」
早速誠一にメールをする。
江崎は「しかし…」と、ポリ袋を眺めてから流し目でこちらを見てきた。
「慧」
「はい?」
「どうしてシャブだってわかった?調べもまだなら、普通葉っぱを連想」
「一口吸ったら苦しかった」
「…マジかよ」
江崎はタバコを咥えながら「まさかあの野郎か?」と火を付ける。
「拾ったときぞわっとしたって言ったらまぁ、はい」
「…そんな気はしたがマジでやるかあいつ、パクられちまえよ全く。大丈夫なんかお前は」
「死ぬかと思った」
「…全くやめとけよこのバカ。お前な、マジで死んだらどーすんだよ、」
「すぐ薬打ったし飲みましたよ。確かに、マジでやるのかこの人、とは思ったけど」
「……暫くお前はシモキタなら南西口にしろ、貸してやるから。な?」
「いいんですか?モグリって堅気の方が楽なんじゃ」
「だとしても別の用意するから。あのね、お前はダメなの、死んじゃうから。わかったな?あいつにもよう言っとけ、次やったら殺…殺害予告になっちまうな、垂れ込むぞバカ野郎って」
「ふふ、はぁい。でもセイさん、反省はしてましたよ?」
「笑い事じゃねぇよ当たり前だわ、ホントあいつ人としてどうかしてる」
だって〜と言うのにも「全く!」と子供のように怒っている。
それにはタマも溜め息を吐いていた。
「何よりシマで死体出たら大変ですし、別の陣地だと探せませんよ加賀谷くん」
珍しくこれに窘められたなと、「本当にごめんなさい」と謝っておいた。
「大丈夫、迷惑は掛けないようにしますから」
「…そりゃそうだがそうじゃねーってば。タマ、てめえも余計なこと言うなやこいつ、こうなんだから!」
「いやいやタマさんは正しいでしょ、ごめんなさいってば」
全く、はこっちだ。ヤクザ向いてないんだから。
「……事務所に一回戻る、でよろしいですか?」
「ああ」
「仰っていた買い物はどうされます?私が行ってきましょうか」
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