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 それは、バイトを始めて間もない頃だった。

 学生時代の先輩だという人に会った。いまは、ラブホテルの一室。

「はーい、足持って足ー」
「足?」
「まぁ、俺が開いてもいいんだけどさー、お前が持った方がエロく見えんじゃん?」

 ベッドの上で先輩は、そう言ってスマホを向けてきた。

「…足持ってって、どーゆーことですか?」
「んー、ぜーんぶ見えるようにさ。足広げるじゃん?その体勢でそうだな…腕にくっと足掛けてよ。入れんの楽だし」

 なるほど。
 意味がよくわからないな。

 慧は取り敢えず先輩の要望に答え、足の関節に腕を通し「こう?」と確認する。

「あいいねいいね、めっちゃエロいわー」

 とパシャパシャ三枚くらい撮る先輩に意味を聞いてみようかと思ったが、その前に左手足が耐えきれず体勢を崩してしまった。

 先輩は満足したようだ。少しケータイを操作してから枕元に投げ、ソレを掴んで穴の位置に焦点を定める。
 腰を少し揺らしながら少しずつ侵入する先輩は「…やべぇな、」と躊躇いがち。
 まぁよくある。どうやら男の穴は女のよりも狭いのだそうだ。

 そういう時は少し力を抜いてやるが、そもそもこの男は、男と寝るのは自分が初らしい。
 あまり意味もない気遣いかと、少しは入っているのだし、くっと力を入れれば、圧でさっきよりは進んだのを感じた。

「…あんなの撮ってどうするんです?」
「ん……?」

 なんならもうこの人、イっちゃうんじゃないかなぁと慧がぼんやりと思った瞬間、思いっきりぐいっと入れられた。
 「あっ、正常位で素面でも…入口…行ければ、はぁ、なんとか、なるんだな…」と余裕もなさそう。

 こっちとしては言ってもらえないといつ力を抜いていいかわからないっつーの、と思いつつ、はぁはぁする先輩の頭を抱えてみる。

「…画像」
「ん?あぁ………いま賭けてんの、お前は知らんだろうけど」
「賭け?」
「そ。誰が先にヤるかなって…っ、」

 先輩は耳元ではぁはぁしながら「っはは、やっべ、やっべえなっはは!」と、どうやら薬がまわってきたようだった。
 慧は先輩の髪を避け「そんなにいいの?」と耳元で聞いてみた。

「あーまぁねぇっ、お前、学校でも意味、わかんなかったもんなぁ、これやってみた方が出来んじゃん?ん?」
「うん、じゃあ欲しいっ……、」

 急にガツガツ動かれ、痛くて力が入ってしまった。
 これじゃ絶対にキツすぎて気持ち良くもないだろうに(前にふとヤった男に言われた)先輩は「うひゃひゃ、やばっ、ははっ!」と、もう気持ち良さも何もない様子。

 というか、大丈夫かなこの人。
 血管とか浮いてるし、くも膜下出血とか起こしそうじゃないか?と慧が思っているうちに、先輩は一度ふるっと震え、ごづっ、と落ちてきた。

 やば、意識失くしてない?
 と思えば辛うじて「………お前もやる?」と、死にそうな声で言ってくる。

「あるなら頂戴。先輩、…大丈夫ですか?」

 ぜーはーぜーはーしているので、あれ、本当にヤバイのではないかと「先輩?」と呼び掛ければ「………大丈夫ほしーならそのうえの」と、まぁ先ほど電気スタンドの上に置いたのは知っている。

 目の焦点も合ってないし、ヤバイかもしれないなと思いつつ、さっと二錠をちょろまかす。

 …鼓動は早い。目も開いているがどうやら動けなくなってしまったようだ。

 目的も果たしたしと、慧はバスローブを羽織り、ケータイで誠一の番号を呼び出した。

「…もしもしセイさん」

 先輩がぜーはーしている。

『なんだ、慧どうし』
「薬なんだけど相手、なんか息とか目とかヤバイの、救急車呼んでも大丈夫?」
『…わかったすぐ呼べ。
 俺も行く。場所は?』

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