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 後日、江崎の自宅で「東京都新宿区で、薬物を乱用した24歳男性の死亡が確認されました」というニュースを観た。

 江崎は錠剤を眺め、「話題のMDMAだな」と言った。

「こりゃあ、平良が行ったのか?」
「…一応。なんかうまくやるから2,3日くらいここにいろって」
「う〜ん…まぁホテル自体はシマじゃねえがお前あのホテルのビル、俺んだよね?」
「はい」
「…それって2,3日後から動けってことじゃん…めんどくさっ」
「…あの人死んじゃった…」

 全然何も聞き出せていないし…単純に心苦しさが勝る。

「…まぁそうなるよな。
 俺の病院紹介すっから行」
「いや、大丈夫…ねぇ一個聞いて貰ってもいいですか」
「どうぞ」
「賭けしてるんだって、いま」
「賭け?」
「で、なんか」

 玄関が開く音がした。
 「会長、食材買ってきました」と、江崎のドライバーだという、多摩という男がリビングにやってきた。
 どうやら、江崎は数日、自分と共に家を出てはいけないのだそうだ。

「おーご苦労さん。
 はい、続けてください加賀谷くん」
「え、あ、はい…。
 あの先輩、学校時代の先輩らしいんですが」
「学校どこ行ってたんだっけ」
「お茶の水のMusic Around Schoolてとこです。MASマッズて呼ばれてる」

 ぱぱっと多摩がメモを取る。
 なるほどと、「この先輩、MASにいた頃に関わりがあったらしいんだけど、覚えてなくて…」と慧が正直に言うと「覚えてない?」と江崎は疑問そう。

「それは…」
「黒田と半井曰く、MASの頃に遊んでた人らしく」
「……お前が?相手が?ていうかそれ、薬物自殺ミスって記憶が飛んじゃったとか言ってたやつに関係ある?」
「う〜ん…そう、わからないかも…いや…。
 多分どっちでもないです。俺、その頃もどうやら賭けられてたらしいんですよね」
「賭け…」
「その頃は意味がわからなかったんだけど、黒田と半井にはよく注意されてました。みんなからかってるから、セックスしよう、に着いて行っちゃダメって」
「いや、からかわれてなくても」
「なんか、おかしいらしいです。変なんだって。しようって言うからなのに、なんか、面白いって」
「……胸糞良い話じゃねぇけどはいどうぞ続けて」
「はい。その延長線上かなって、先輩が「賭けてんだよ」て写真を撮ったときに思いました」
「………おいおい待て待てツッコミついていけねぇんだけど何それ、は?」
「みんなそんな感じです反応は。多分俺がおかしいんでそこはスルーしてください」
「……多摩、取り敢えずこいつ。丹後たんご洋平ようへい付近で洗ってくれ。ブツは見た限りMDMAだ」
「なるほど、それではウチのじゃありませんね。
 加賀谷くん、その丹後洋平付近に心当たりが有る方は」
「…ごめんなさい、死んじゃったんであんまり聞けてない…ただ、結構な大物と、セックス1回毎に対バン組んでやるって言われたし…。
 あ、まず、バンドの話をしますと、あの人ドラムなので結構コミュニティ広いかも」
「…お前さ、誰だかっつーかいるかもわかんねぇ相手と繋がりたくて」
「ついでに薬くれるって言ったし、前から怪しかったけど話進む前にで…」
「…あぁそ、全くおかしいんじゃねえの。
 宛いねーの?マジで」
「…あの人が吹いてた話で良ければなんか……ソロの夜野よるのさんとか、あとは…フェスってわかりますか?あそこが吹いてた中では一番大きかったけどでんにじさん、えっとエレクトリック・レインボーってバンドです。
 あと、noisy musicってとこでベースやってて脱退した人と話したことあるって言ってました」
「…虱潰しなんで思い出せるだけ、出来れば」
「わかりました」

 わからないだろうバンドもわかるだろうバンドもさくさく言っていけば「ん〜…」と江崎は眉間を揉む。

「…引っ掛かるような引っ掛からないようなだよなー…ゴシップ誌に嘘っぽい記事が出てるヤツが何人かいたな…でも」
「そうですね…完全に嘘っぽいというか…」
「男の見栄はたちが悪いからな…試しに丹後がいたバンド状況とか、わかれば聞いていい?」
「…あまり深くは突っ込んで…黒田も半井もなんですが、聞けなかったけど本当は若干ヤバイ…うーん不仲説は流れてました。
 実際ギターの…田辺たなべ田辺さんが抜けちゃって、あとなんか最近みんなサポばっかやってます」
「…それって最早壊滅じゃん。名前は?」
「丹後さんのグループですか?ポリシーなんとか。
 田辺さんとは別の…ギター募集してた先で一回会いましたよ。Mr.Sunshineてバンド」

 江崎は弄ったケータイを見せ「こいつ?」と聞いてきた。田辺 ポリシー バンド で検索したようだ。

「そう、その人。この人もMASの先輩らしいです」
「んーわかった…多摩、取り敢えず」
「わかりました。田辺とポリシー・…オーバー・……スタンド…を念頭に置きつつまずは…まぁ、丹後自身のことは平良さんに任せます、と」
「よろしく頼んだ。悪いな」
「いえ、では。
 あ、えっとその前に加賀谷くん」
「はい?」

 多摩は慧に無表情で「大丈夫ですか」と聞く。

「…本当にすみません、はい」
「貴方は一般人なのをお忘れなく。
 お願いがあるのですが……まぁ、色々とお仲間にも、情報収集、として」
「まどろっこしい男だなお前は。取り敢えず仲間に報告してやれ。何か出てきたら俺にも情報を。今頃多分ヒヤヒヤしてんぞ、それくらいの責任は取れ」
「…わかりました。すみません」

 多摩はペコッと頭を下げて出て行った。

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