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「…わかった、ごめんね黒田。一応俺は大丈夫だから。曲はじゃあ、ごめん、真鍋くんに任せておく…」
『…出来るだけマトリさんも調べてくれるって言ってたから』
「…ねぇでもそれって黒田も半井も真鍋くんも大丈夫なの?いくら俺がどうであれ」
『大丈夫、俺達は『知らない』になってる。そこはマトリさんがなんとか…としか。ダメなら警察行けばいいし。ただ、慧はとにかく心配だった。
じゃ、切るね。もし大丈夫そうなら俺ん家防音だから、そこでやろ』
「待って」
てゆうか。
「明々後日ライブでしょ。そこはやらないと。ポリシーはどうなったの?3マンだったけど」
『あぁ、ドラムサポを大至急借りてる、ちなみに半井は断った』
「…逆に変だし。多分サポ借りられなかったら2マンになるよね。そのパターンの曲変もしたいから明日明後日」
『そこは任せて、ただそうだね、確かに…ごめんテンパっちゃって』
「いや、ごめんはこっちだ。ごめんね。じゃあ…明々後日早めに行くから」
『わかった』
通話は終わった。
「良い仲間だな」と江崎は言った。
「まぁ、俺が取った話なんで」
「…はぁ?」
「俺、あの人とは二回寝てますから。みんな知らないけど」
だからこそ。
「…迷惑掛けちゃったな」
「…確かに。言えるわけないな、それじゃ」
江崎はふっと後ろから抱きついて来ようとしたが「ごめんなさい、やめてください」と、悪い癖が出た。
江崎がなんとも言えない表情をするので「…いや…」と話題を考える。
「…罪悪感が半端じゃなくて」
「…そうだな。なあ慧」
「はい?」
「何故俺と寝た」
あぁ、まぁ…。
「…すみません、怖くて」
「…あっそう。まぁな。
なぁ、降りても良いんだぞ」
「いえ、」
それだけはしない。
後ろに引き返すのはしないことにしたのだ。大分前から。なんせ、後ろなんてものはない。
「…それでこそ男だな、じゃあ、理由は聞かねぇ、俺も言わねぇ」
しかし、江崎は笑って許してくれた。
「けどまぁ無理はよくないとわかったところで。
しっかし、あぁも訴えかけられるとこっちも急ピッチだな。
話し方的にはなんだ?予想外のところから来そうな雰囲気だったな。
うーん、真鍋ってヤツのコミュニティとやらはなんなんだ?」
「真鍋くん、明るいんで結構色々な人と仲は良いですが…黒田や半井が知らなかったということは年下コミュニティで」
「所謂拡散か。若者を洗うのは苦労するな。だがまぁわかった気がする。直感だが相手方はまだやってんな、それ」
「…そのラスボスとなると…」
「丹後はお前らの年上だよな。しかしふたつか。絞り込めそうかな、ただどこまで行ってるか…つっても高々二日だし、まぁ仲間はマトリが来て驚いたんだろうが、丹後の先、さらに先輩なんかな。真鍋ってヤツは学校関連?」
「多分…。か、ファンかなと。俺をさとちゃん呼びするんで」
「ん?」
「俺の愛称らしいです」
「……なるほど。平良の方が多分、近くにいそうだな。つまり正攻法だ。そうなってくると把握した組から洗った方が早い。
ちと早いけど、飯食ったら俺は行くわ。代わりに地味な護衛をつける。平良の家じゃ割れてないだろうし、俺が側にいたら多分バレる。
そうだな……“並木”と名乗ったヤツに着いて行け。後は平良が帰るまで家から出ず、指示を仰げ」
「わかりました」
「慧」
彼は軽めのキスをしガシッと両手で頬を掴んできては「心配してくれる人がいるんだから気にしろ」と言ってきた。
「お前が例えば自分をどうでもいいと思ったとしても、まわりはそうじゃない。いまのでわかったな?」
「…はい」
「仲間は俺が護衛してやる。可哀想に声が震えてたぞ」
「…はい」
「…自殺の件が過ったんだろ。そのときの友人だな?」
「…凄いですね」
「単純だ。あの話し方はどう考えても経験則だよ。
ブツもわかってるし、案外早く終わりそうだな。よかった。多摩にも言うわ」
そう言って江崎はケータイを取り出し「あ?多摩?」と連絡をしていた。
「すぐに会議だ。だが俺と入れ換えで並木を俺ん家に派遣してくれ。出来るだけ地味な格好で。バンドコミュニティは多分、平良の方が近くにいる。
慧、なんかわかったら報告よろしく」
「はぁい」
そうしてその日は帰宅した。
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