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「…ぶっちゃけ初めてなんだよね」
「…は?」
「男とするの」
江崎は慧の乳首を舐めながら「俺務所入ったことないし」と、昨日の薬中みたいなことを言い出した。
「…どんなのがいいの?」
そう言う割には指でイかせる技術があった。間違いなく嘘だが…不思議と不快でもなく。
「…入れていいですけど」
「ヤだよ、まだね。お前まだ痛そうだし」
仕方なしでオーラルセックスになった。
嘘吐き。でも、江崎が言いたいことが少しわかった気がした。
初めてだった、こちらがどうというのを気にされたのは。
おかげで翌日まで熱が籠りぼーっとしてしまったが、前日と同じ時間に多摩がやってきた。
多摩は明らかに何かを察したようだったが、至って普通に「なかなか難航しそうですよ」と江崎に報告をしている。
「繋がりなどを…まぁ、ライブハウスのブッキング表を眺めたのですが、確かに丹後でしたら…結構、最近話題そうなバンドは引っ掛かりましたが、そればっかりで」
「ふむ……。
方針を転換してみるか。例えば、解散したバンドやそれほど有名じゃないところ」
「畏まりました」
多摩はその程度で言及もなく去って行く。
慧がぼーっとしていることに江崎は気付いていそうだったが、特に何もなく二日目は終わりそうだった。
夜は怖くなる。
共に布団に入り江崎にピタッとくっついて寝てみた。あの、深いキスをされて終わった。
三日目の朝、夕方には帰らなきゃなと思った矢先で「風呂に入れな。昼飯は作ってやるよ」と言われ、それから漸くそれらしいことをした。
「キスしたいな」
と慧が言ったらあっさりだった。実際気持ちよかったのだ。
「俺はダメなヤツだからな」
と、江崎にあっさり脱がされ、自分からオーラルを仕掛けている、攻めの体制など初めてだった。
「加減も決めていい」
と言ったくせに、慧が上に乗ればずるずるずるずると、何かを引き摺り出すような…。
なるほどこの人、そういうのを楽しむ派なのかと…個性についても初めて考えたが、色々考えても江崎より先に達してしまい、それで終わってしまった。
いいのだろうかと引き摺った最中、帰宅前に半井から電話があった。
「…もしもし?」
『今大丈夫?』
「え、うん」
『…すっげぇ話しにくいことなんだけど、冷静に聞くメンタルある?』
「うん、何がどうしたの?」
どうやらそれに、江崎が耳を攲てたのはわかった。
『お前…ヤバイぞいま』
「…ヤバイって?」
『んー……』
側で「半井変わって」という声が聞こえ『もしもし慧?』と、黒田の声がした。
「もしもし黒田?」
『…暫く休んでいいよ慧。
曲に関してはメールでやり取りしよう。ほとぼりを冷ましたい。
今朝、真鍋が報告してきた。慧、この休み中どうしてたの?具合悪いって聞いたけど。大丈夫?病院?』
「え……」
ヤクザさんと一緒でしたなんて言えない、と思えば『ヤバイ人と関わったりしてない?』と聞かれてしまった。
「ううん。ごめん本当に体調が」
『その体調って、なんか飲まされたりしてない?』
…どういうことだ?
「え?」
『……ポリシーの丹後さんが死んだ。
お前が体調を崩した前日に。その関係でマトリ?さんから事情聴取された。あの、ライブのときに会った人』
「…そうなんだ」
『で。変な写真が出回ってるんだけど…」
「え」
『……お前丹後さんとキメセクした?』
「え、なんで。別に…てゆうか何それ」
その前に死んだと思ってたけど。
『まぁそれはどうだっていいんだ、もしそうならまず体調はと』
「…大丈夫、今日熱も下がった。風邪引いちゃって歌も無理だってくらい」
『アナフィラキシーじゃないんだね?
あの…丹後さん、薬やりすぎて死んだらしい。もし、その場にいたら慧はどうなのかと、いま大丈夫なら心配は一個片付いた。
で、だ。あの人ちょっと…ヤバイ薬やるだけあって変な人とつるんでるんじゃないかって言われた。心当たりある?』
「…ない、けど……」
『とにかく、一回休んで。片付けとくから。知らないなら捕まらないだろうと思う。信じるけど、そんなことよりも大問題はバンドコミュニティなの。
例えばコラだったとしても、いま慧の印象、かなり悪いというか…ヤバそうな人出てこないかと、考えすぎかもしれないけどその出回ってるコミュに変な人が数人いる。そっち系の人が』
「…そっち系って?」
『なんとも言えない、俺たちもいまいち知らないから。ただ、真鍋が友人に「大丈夫か?」て言われたらしい』
江崎がガッツリ側に寄ってきた。
かなり近い。
「…取り敢えずじゃあ画像と…気を付けたいからどういう感じか」
『やめた方がいい、マジで。だからここまで。知らなきゃ前みたいにすぐ帰れるんだから。嫌なんだよお前どっか抜けてるから』
……確かにそれでこのヤクザさんともそのマトリさんとも繋がりましたなんて、言えそうにないな、これは。
…切りますねの意で江崎を見る。案外あっさり頷いてくれた。
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