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「…今回の丹後について知ってることは」
「そ!丹後先輩も最近良い噂聞かないよね」
「まぁ…」
「急になんか…解散しそうだからかな、と思ってたけど」
「なるほど。
 ちなみに雑談程度で良いんだが、友人の知り合いってのは、どういう?」
「ん〜……これぶっちゃけ、事故画像じゃないっすか?なんかみんな気は使ってくれちゃってこっちにはいまいちだったんですが多分…めっちゃ嫌というか何に関しても厄介で、性格に難ありな人というか。でも、あんまり断れないような雰囲気の。結構な先輩で、シルヴェスタさんって人の話が」
「うわぁ…」
「あー…ぜってぇ近寄りたくない雰囲気出してそうな人ね。全然良い噂出てこなくてでも俺たち、会ったことも話したこともなんもないから余計、な感じの人」
「シルヴェスター?映画か?」
「活動名しか知らないくらいの人。バンド持ってますがもう多分…どーなの?解散したの?」
「いや知らない…」
「てくらいの人、付近の人がコミュにいるらしいんすよね。それで俺に言ってきてくれました」
「…なるほどね。バンド名くらいは知ってる?近寄らないなら」
「あー、ジョニーヘルってとこです。|浅井《あさい》|健一《けんいち》の唄かなんかから取ったらしいっすよ。年齢はだから…30?40?くらいの人」
「…ふぅん…宛になりそう?」
「まぁなんか…例えば関係なくても何かしら出てきそうではあるかな…。
 すみませんね、慧の依頼なのに」
「いや、わかったよ。参考にする」

 彼らが言いたいこともわかった。確かにあいつ、そういうのに突っ込んじゃいそうだな。
 …犬ならば、それは有り難い事の筈なのにな。

「まぁ思いやりのある君たちには悪いが、これはさ…俺から加賀谷に直接聞くから、悪いけど」

 彼らは別に非難もなく、あっさり了承してくれた。
 今日、帰ってくるはずだ。聞けば良い。

 三人は切に「よろしくお願いします」と頭を下げるような、良い仲間だった。

 全く、こうともなるとあれは碌でもないが…なるほど、印象は変わった。言われてみればというのも共に暮らしていてわかる。

 あれがMDMAを持ってきたとき、自ら平気な顔でこの画像を持ってきた。
 殺してやろうかと思ったが、この2日で実は2回抜いた。

 元来自分はバイセクシャルだ、気持ちは半分わかる。だがどうやら加賀谷慧のそれはバイセクシャルのその感覚ではないらしい。
 若干わかっていたからこそ少なからず嫌悪に似た物も、なくはなかった。

 なるほどね。

 バイセクシャルには性別という概念が薄い。いや、関係がない。
 だからこそ…自分にはある、友達との強い線引きが。ここは男女、特に、同性に対しては性別がない分、絶対領域なのだ、犯してはならない。

 しかし最初からそれが狂っているとなると、なるほどな、行為や関係に意味などなくなる。
 ある意味バイセクシャルより自由だ。良いご身分だこと。

 そういう仕組みだと解けば彼らの不安はほんの少しだけ変わるだろうかと思ったが、やめておいた。
 博打だ、そんなもの。この玉ばかりは打っても当たりが出ない。

 なんなのか本人がまずわかってないからダメなのだ。せめてと、仲間には「電話でもしてやれ」と言っておいた。

「…多分、そんなヤツはな、察して動くんじゃいつまでたっても君たちのメンタルによくないぞ。子供なんだよ。それでも、大人なんだ。なかなか理解出来ないんだよ」
「…傷付くんじゃないかって」
「人生傷付かないことの方が少ないよ。まぁ、それを伝える君たちも傷付くだろう。だがいま君たちもわかったはずだ、これは命の話だ、甘えてはならない。
 大丈夫、俺が守るよ。それが仕事だ。ただ、少し薄いな…時間が掛かりそうだ。それまでこちらも満足にはいかないし君たちもそうだ。わからせてやれ、それを」
「………」
「それで?真鍋くん。よければその友人の連絡先…いや、SNSアカウントでもいい、教えてくれ。でも、最悪君が危なくなるから何か聞こうとはしなくていい。何かわかれば随時連絡が欲しい」

 …試してやろうか、慧。お前がどんなヤツなのか、知りたくなった。

「わかりました」

 そうして自宅に帰った。

 慧が何食わぬ顔で帰ってきていたので一言、「シルヴェスターというヤツを知ってるか?」と誠一は聞いてみた。

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