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「…は!?」
葵にとって洸太の意向は大して意味がないらしい。
脱いだズボンを鞄にしまい、ネクタイをくいっと少し緩め「熱いなぁ…」と、ワイシャツのボタンを二個開け、とハタハタとシャツを仰ぐ。
葵は面白そうな表情で「あれ、俺もやりたい」と側に寄ってきては、洸太の股間をズボンの上からスッと撫で、もにゅもにゅと触り始めた。
視線も外さずじっと見てくる葵の光彩は濁りなく、ビー玉のようにキラキラした薄茶色。今にも涙が出そうなほどにじわっと水気のある網膜。
白い部分が少し、充血していた。
がんっと、タンク、洸太のすぐ真横に片手を付いた葵は、洸太の股間から手を離しスカートの…後ろへ手をやり「まだいけるから」と言った。
今にもキスをしそうな近さと、さっき登校したときに気付いた…香水か何かの匂い。これは、どうやら手首あたりに降り掛けたのだとわかった。
「…久瀬、」
「ヤダ」
「は?」
「葵って呼んでよ」
「…これ、どういう…」
スカートの中からくちゃくちゃと音がする。
彼はそれから「昨日の放課後のやつ」と囁いた。
……うわ、確かに体勢的にはこれ、上に乗られたら、まんまそれだ。
「…ちょっ…と待てよ、」
冷や汗が出そう。
つい、少し肩を押し抵抗したが、その軽さに驚いた。
押された反動で葵はその場でしゃがみ、空いた手で自然と洸太のベルトに手を掛けたので「待てってば!」と手首を掴み阻止しようと試みる。
彼は潤んだ瞳で洸太を見上げ「どして?」と、純粋そうに聞いてきた。
「…だから、腹痛かったんじゃ」
「むず痒いんだよ」
「は?何が、」
「わかるでしょ?見てたじゃん」
あの光景が頭に浮かび、制しているはずの手が…ふるふると震えてしまった。
葵がにやっと笑い「痛い」と言うのについ手を離してしまえば、あっさりとベルトは外されたが、やはり「待て、」と、ズボンのボタンに手を掛けようとしたその手を…さっきよりは弱めに掴んで制した。
「…………」
沈黙したまま見つめてくる葵と、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと音が響く個室。
はぁ、と葵の頬に赤が差し、明らかにそう…感じているだろうと視線をズラしたが、スカートで見えない。
「ねぇ、こうちゃん」
ハッとした。
「……っなんだ、それは…」
「見たでしょってば」
…歯を、ギリギリと噛む思い。
こちらの気も知らず「ボタン、弾くよ」と淡白に言われてしまい、手を離してしまった。
…でも、やはり手が震えている。
この手で昨日抜いただなんて、そんな、踏み潰されそうなどうしようもない自尊心。
あっさりとボタン、チャックを開けた葵はふっとそこへ顔を…唇でむにむにとやる感触、そして前屈みになったせいかはっきりではないが見えた、いや、本当は見なくてもわかっていた、葵がスカートの中で何をしているのかなんて。
思わず無言になってしまったが…どうにもこいつは慣れている。
パンツの中では苦しいなという絶妙な頃合いに口でぐいっと、下着からあっさりと出されたそれを眺めた葵は躊躇いもなく手で弄り、パクっと口の中に入れてしまった……熱い、唾液が滑る。
舌が巧妙に筋を舐めあげるその感触は…経験してきたどれよりも的確に自分を攻めてくる。
「…葵っ、」
「ふ?」
見栄えはかなりエロかった。
思わず目を反らし「しゃ、喋んなそこで…」と、自分が呼んだくせに無茶を言ってしまう。
……相当気持ちいい。
ふと、隣の個室で物音がした気がして、はっと眺めた。
そういえば誰かがいるとか全く気にしなかったけど、立て看板の成果はあった、誰も入ってきてはいないはず…。
そのままチャイムが鳴った。
そして、隣のは気のせいかもしれない、足元もどうやら…空いているし。
口を離した葵が「集中してよ」とふっと立ち上がり、左手をがしがしと動かして止め、グッと側に寄り、スカートのそれからも指を抜く。
あぁ…これは…っ。
焦点を定めたようだ、グッと包まれたそこはかなりキツく、圧で息が止まりそうになった。
だが、それは押し進めるというよりかは一瞬で、「あっ、」と葵が体勢を崩した瞬間、ぬるっと滑った…全体的に圧迫され、やつは膝の上にガツッと座っていた。
股間にはムズムズするような刺激…なんだこれ、刺激物入りかなんかのローション?と、葵が熱がっていた理由はわかった。
葵は滑っていたであろうその手をトイレットペーパーで拭い、「あはは、」と…熱い目で洸太を少し見下ろし少し余裕もなさそうに笑った。
「入っちゃった」
…苦しくて声も出ない。
便座に手を置き身体を支えていたのだが「支えてて、」と、葵はその手すら腰に誘導した。
葵の頬にへばりついていた髪を…撫でるように耳へ掛けてやると、何故だか一瞬だけ悲しい顔をしたように見えた。
「…優しいね、こうちゃん」
「…葵、」
まるでそれを誤魔化すように腰を上下させ始めた葵は、俯いていた。
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