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 …なんだろうな、これは。

 どこかで自分か何かを俯瞰している。確かに、もう入ってしまったからにはどんな言い訳や倫理も通用しないなと、洸太はもう、流れに任せることにした。

 その細い腰を掴みながら暫く自分も動きに合わせて突き上げてやる。
 俯きながらも僅かに「んぁあ、」だの「あぁ、」だの、葵は少し高い声を洩らし始める。

 ギリギリ歯を噛むほどの痛い…快感。

 耳朶の側で苦しそうに「…こう、ちゃん」と言った葵に、鼻血が出そうになるアドレナリン。

 こんな、頭がすっ飛びそうな気持ちよさ、初めてだ。

「……あ、」

 洸太の頭を抱えた葵は、ふと、熱さもない呟きを漏らし、あの………蟀谷あたりに唇を当ててきた。

 気付けば葵の背を抱き締め、まるで恋人のような抱き方。

 ふと、腹あたりに熱さを感じ、そうか、気持ちいいのか、男だもんなと洸太がスカートに手を忍ばせようとすると、「だめっ!」と急に動き止めた葵の瞳は、先程よりも潤んでいた。

「……っなんでっ、」
「だって……」
「イキそうだろ?これ」
「…やめ…方が、」
「はぁ?」

 …頭に浮かぶ、昨日の光景。なるほど。
 若干頭にキた気がする。

「っせぇんだよ、」

 理性はたった今、崩壊した。

 葵のパンツに手を忍ばせ直接触れば、普段は、メンズかだなんて考えたけど。
 止まってしまったならと、突き上げがしがしとしごいてやれば「まっ……っ!」と、葵も一気にキたらしい。

 ふっと一瞬、葵の足がピクッと動いたかと思えば、だらっと自分に凭れ掛かってきた。
 手元の股間も徐々に徐々にしなっていき、トイレットペーパーを出そうとして気付いた。滑っているが…白くない。

「…ん?」

 葵は側で弱々しく「…ごめんっ、」と震える声で言い、さっと退いたがやはりまだ立つには充分ではなかったらしい、ゴツっと、隣の壁にぶつかった。

 それを眺めながら手を拭えばまるで、葵は死んだような顔でどこかを眺め、「イかせらんなかったね」と、投げ槍な口調。

「………」

 自分のちんこは確かに元気で遊び足りないらしいが、気持ちも作用する。こちらも徐々にしなっていった。

 まるで用が済んだとばかりに、少しふらつきながらもしまったズボンを取り出し、最初の要領で穿き直し始める。

 …じんじんする、ちんこも心も。

「でも、嬉しかったよ、ノートとか」

 消耗した声でそう言い、少し覚束なく個室のドアを開けた葵がふと隣の個室を見た気がしたが、そんなことよりもと、洸太はじんじんする股間をしまい、「待て、」と葵の手を掴んだ。

 無というよりは呆けた、焦点も定まらず濁った瞳で振り向いた葵に「…具合はどうなんだ」と、授業中から聞きたかったことを漸く聞く体裁。

「保健室」

 彼は、明らかに無理した顔で微笑んだ。

 …元々はそっちが本来の目的だった、何故こうなったか。
 洸太は黙って立ち上がり、「一緒に行くよ」の意思表示をする。

 別にどうでもいいのだろう態度でふいっと前を向く葵に付き従う際、洸太もふっと隣を見た。

 ドアが閉まっている。
 あれ?ここ使えない方の個室だっけと思う間も許さず、足は震えているらしいがさっさと出たいという態度の早足な葵に着いて行き、まずは二人で手を洗った。

 気付いたが、さっきも長かった。あかぎれでも出来そうなほどに石鹸でごしごしと洗うその手は、多分本当に洗いすぎている。水で濡らしていても、乾いていることに気が付いた。

 無我夢中というようにずっと続けそうなそれを止めさせようと一度手首を掴めば、葵はハッと気付いた表情で見つめてきて、ふっ、と肩の力を抜いたように見えた。水を止めてやる。

 湿ってはいるけれど手荒れを確かめたいなと、保健室に向かう道中でつい手を握ってしまったが、パシッと払われてしまった。

 …うん、なんか勘違いさせるか、これ。

 謝ろうかと思ったが、それも変だし傷付けるかもしれないと、やはり黙ったまま着いて行くだけになってしまった。

 …何かがうずうずして、もどかしい。

 保健室に着くと、何かの補充をしていた…ひょろっとしたような、でも肩が広いような男の保険医が「あぁ、マモルか」と、まるでいつものことのように素っ気なく言った。

 …前から男だったっけ?イメージって大体おばさんだけど。

 ふっと保険医は自分を見つめ「同じクラス?」と聞いてくる。

 葵も葵で「センセー、ベッド借りる」と、いつものこと、のような自然さで真ん中のベッドへ入ってしまった。
 保険医はそれを眺めてから、再び洸太を見つめてくる。

「あ、はい。長内洸太です。
 腹痛いっつーんで、連れてきました」

 …意外と若いかもしれない。目の…なんというか輝きがない、何事に大してもつまらなく感じているような大人の目をしているが、笑わなそうなのに肌艶などはあるような、特別意識もしないような、普通の若い男。

「あそう。洸太くんね。わかりました。
 君の具合は大丈夫なんだよね?それとも…もう少しで3限終わるし、少し休んで4限からにする?」
「いや…」
「まぁ、ご苦労様」

 …保健室なんて1度くらいしか来たことないと思うが、この人、こんな感じだったんだ。

 てゆうかなんか、親しくない?

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