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やはりモヤモヤするので、洸太はすぐ側、一階のトイレで抜いてから戻ることにした。
放心したが、チャイムが鳴りそういえばと、二階のトイレへ戻りドアの前に立て掛けたままの看板を元に戻し……やっぱり気になった。現場の隣の個室は確か、掃除用具入れなんかではなかった気がする、と。
だとしたら…少しぞわぞわするけど…花子さんでもないんだしと確認してみる。
……開いている、一番奥。
え、マジか、え?どーゆーこと?確かにあのとき多分あいつはなんも気付かずに…致していた。マジか、花子さん?
いやどう考えても誰かいた、気配を消して、ということだよな。マジか、え?え?なんで?
いや、よくよく考えたら俺たちなんで?
…テンパりそう。
しかしもう起こった事件だ、どうにも出来はしない…あれ、足とかあったっけ、そうだよな、便座に座っていれば足、あるはず。でも確かなんとなくさっき確認したんだよ、え?花子さん?出るの?男子便所に?それ痴漢じゃん花男くん?
そんなわけなかろう、令和だし。俺の頭は昭和?かなんかかよ。
さっきの頭の熱さが更に冷えて下がり、倒れそう。
保健室ぅ…、でも取り敢えずと、教室に戻り突っ伏していたらやけにガヤガヤし始める。
移動教室だったようだ。次のチャイムには誰もいなくなっていた。
今から行くのもダルいしもうなんか…と、抜いたせいか、洸太はあっさり眠れてしまい、結局昼休みのチャイムで起きた。
側頭部をチョップされ起き上がると、わかっていたが弁当を持った三澤だった。
「いって、」
「寝てたんかよ」
「あのさ、」
話したい。
が、アレは話すことが出来ないなと口籠ってしまう。
「なんだなんだぁ?」
三澤は当たり前に葵の椅子に座り、親指と人差し指で「チェンジ」と合図をしてくる。
…鞄もないしな。多分、帰ってこない。
なんなんだ、この、“葵がいないことの当たり前”感。
三澤の指示通り互いに机をくっつけ、洸太も弁当を出した。
「理科は欠席になったぞ」
「いやまぁ…わかるわ欠席したし」
「久瀬と出てってから来てないじゃん。3限はなんとか病欠っつーか、久瀬を保健室に連れてったで通ったけど、お前ら何し」
「思い出した、お前なんで裕翔って呼ばれてんの?」
そうそう、そこ、話していけば後に繋がりそうだよな。
「は?呼ばれてないけど?」
「………んん?」
「あいつがそう言ったの?」
「………たんまっ、」
え?何?どゆこと?昨日確かに引っ掛かったんだけど、そこ。
でも、まぁ。
「…まぁいいや。…えーっと、うーん、取り敢えずお前、幽霊懐疑派だよな?」
「は?何いきなり。頭でも縫った?」
「縫った、一回。
お前が座っているその席の久瀬葵だが、アオイじゃなくマモルと読むことが昨日判明した」
「は?なんなのさっきから。難読過ぎてバカにはわかんねぇんだけど」
「だよなぁ、俺もそう思うけど…なんか親父さんがめっちゃ名前の説明してきた」
「俺母ちゃんがハマってるナンプレすらわかんねぇんだからハッキリしろよ」
エロしか興味ねぇもんな、お前。
言おうとしたら当たり前に…色々なエロシーンが思い浮かび卵の細かいやつを吹き出しそう、それを我慢したら鼻から出そうになった。
「え?え?何?お前マジで大丈」
「……ったんま、」
片手を突き出し一度頑張って咀嚼する。
…きっと内容自体も噴飯ものだが全く喉に詰まったままだ。持ってきていた水筒で流し込む。
「……んーと…、あのマモルだった可能性が大になってきて」
「………………?
あ、あれか!前から言ってた弁当屋の」
「そうそれ」
「いやぁだってあれ女子だったじゃん?今頃超エロい感じに」
「……そこから!?え!?」
「は?」
なんで“超エロい感じ”だけ合ってんだよこいつ。超能力かよ。
「だって、だから好きだったんじゃねーの?お前」
「……っわー心読むなよ気持ち悪ぃ…」
「読んでねーよデレデレだったじゃん、あんま覚えてねーけどその印象だけある」
「いやぁまぁ確かに初恋だよ」
「だろ?」
「でもすぐわかったよ男だって」
「……そーなん?」
「そうだよ。わかんだろ名前“マモル”だぞおい」
「わかんねーじゃんそんなん。“あおい”ですら男だぞ」
「…まぁ、」
ふと間が生まれ「え?もしかしてお前らそういった」と言う三澤の超能力に「違う!」とつい言い切ってしまった。
「俺も確かに昔は葵を女だと思ったよ最初、初見っ!でも男かぁってなって初恋はすぐに終わったんだよだから普通に友達やってて」
「え何、急にめっちゃ早口じゃん。
…こうちゃんや」
慈悲深い目をした三澤は「俺はソッチは否定しない派だぜ…」とばあさん口調で無駄に優しく言ってくる。
「令和だし…」
「だから違」
「俺のねーちゃんこの前大量に男恋愛の…ボーイズラブっつーらしいな、買ってきて一方的に熱く語ってたよ。なんたら穴っつーのがあるらしく、女のあそ…こみたいな」
「ねぇよ!!!」
あ、つい言い切ってしまった。
弱々しく「俺にも付いてねえしお前にも付いてねえだろ、」と意味もわからず焦って補足する。
「うん…オカルトかと思ったわ俺も…」
「だよな!?」
「妊娠とかもするらし」
「妊娠!?」
……あんときゴムの概念、そう言えばなかった!
「…保険の教科書間違ってんのかなとかその後こっそり確認しちゃったわ…来年受験だし」
「……バカだなお前マジで。なんで高校入れたんだよ保険は入試に出ねぇだろっ!大学行くのやめとけ!」
「いやぁ医者になら」
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