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土曜日。
北口のすぐ側、先に葵が来ていた。
こちらに気付いた葵と目が合うと、俯きがちなもじもじした様子で寄って来たからすぐにわかったけど…驚いた。
半袖のカーキーシャツ、黒い膝上の…スカート、ではないな、キュ…なんとか。腰に細い皮の紐がリボン結びになっていて、足元は靴下に底の厚いブーツのようなサンダルのような、とにかくレディース。
つまり、どう見ても女子だった。
あぁ、厚底でいつもより視線が高いけど、やはり少しは小さい。というか自分が長身なのだが…。
か………。
ついつい目を…逸らしたいけど釘付け。
割と合わせやすい目線のせいか、葵はずっと俯きながら恥ずかしそうに「だ、男子でも、トイレには、入れるように……キュ、キュロットに、したんだけど……わ、わかる?」
わかるけどこれは女子だ…。
「あ、あぁ、うん、えっと…た、多目的使えば…」
というかやっぱり…なんでだ、可愛い、めちゃくちゃ似合うじゃないか…。
“彼女”で間違われなそう。普段制服だからか、まさか本当にレディースがここまで馴染むとは…。
「か…」
わいい……!
と言いたくなるのを抑え、しかしやり場なく両肩に手を置き下を向いて悶える。ガッツリ見える足は白くてツルツル…長い…長く見えるのかもしれないけど、多分ハイウエストみたいな感じだし…。
しかし、その辺のギャルとかよりも清楚な色合い。何これめっちゃ好み…。
「あ、あのぅ…びっズなら、男子2人より」
「可愛い…」
やっぱり心の声が出てしまい、葵も思わず「へぇっ!?」と変な声を出していた。
「に、似合いすぎてマジでビビってる…」
「あ、あっ、えっと、あ、ありがと…」
ふと、右の裾をちょんと摘んだ葵が、さらに呟く…囁くほどの小さな声で「ホントは、これがいいの…」と言った。
見上げると、首筋あたりが赤み差していたから。
「い、嫌かな?」と言うのを遮り落ち着いた、葵の頭をぽんぽんすればあっ、どうやらセットしてくるくるしてるけどこれはワックスなのかな?とどこかで過ぎりつつ「いいじゃん」と言ってやれた。
「似合ってるし、それで自然体とかもうそれOKじゃん。恵まれてるよ。俺それ着たらあれだもん」
「…こうちゃんはラフだね」
確かに、裾が長いシャツとシャツとジーパン。でもまぁ裾が長いやつは正直あまり着ないけど、最近こればかり売ってるもんで…。
「ははっ、取り敢えずトイレ問題は多目的で。じゃぁ…」
照れ臭くもあったが、手を握りビーズ展に向かうことにする。
「あっ、」
自分より若干体温が低い気がするけれど、葵も汗は握っていたらしい。
そうか、こうやってさらけ出すこともあまりなかったんだな、きっと。
パフェ推しの洋食店もこれでクリアだ。
「まず、飯行」
「こ、こうちゃん、手とか」
「あー、汗?」
「いやあのそうじゃなくてなんか恥ずかし…」
「なんで。カップルカップル」
「カップル…」
あぁ、まぁ。
気付いてないとはそろそろ自分も言えないな。俺、多分こいつにそういった意味で気があるんだ。
一瞬、親父に着せられたのかなと思いはしたが多分、この綺麗な足。絶対あの変態オヤジは葵がこれで外に出ることを許さないだろう…。
てゆうか。
「抜け出せたん?家」
「え?あぁ………」
あ。
もしや忘れたかった「桐生さんが途中で来る」……なんだと!
「へぁ!?」
「足ないし」
「足…」
「………まぁ、そのうち呼ぶけど、これ終わったら…」
…なるほど。護衛かあいつ。
ならば。
「ビーズ、多分小規模だから、疲れてなかったらゴッホ行こ」
「え、」
「うん。
今日はなんかデート遊びを」
「ゴッホ…。
いいね、わかった」
ひとまず、駅ビルの中に入る。
手はずっと、繋いだままで。
後ろから着いてくる葵がスルッと、指の間に指を絡め握ってきたことも当たり前に受け入れている。
ああ、そうか。
これが所謂“初恋”だ。昨日もぐるぐる考えたしこれまでのことも思い出したせいか、痞えはなくすんなりと、自分の中で答えに行き着いた。
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