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 黙り込んでしまった。
 シノの顔だって見れない。何をしていいかわからないし急に、思考回路が軋むほどに緩くて早く回る。

「じゃ、切ってもいいわけだ」

 ………時が、止まったかと思った。

 シノの顔を見れば、シノは少し…何故だろう、いつもより…会った時よりも優しいような切ないような…淡い表情をし「お前もね」と言った。

「……俺は、」
「あそこ、ご察しの通り、昔の男と行ったの。そいつは今も行くはずだったんじゃないかな、子供とか…でも、連れて」
「…は?」
「ガクは確かに捕まえておきたいな、そろそろ俺もウケは悪くなる年齢だし」
「…らく
「ん?」
「永町楽!名前!」

 急にポカンとした表情をしたシノを見て、カッと恥ずかしくなった。

 何言ってんだ、出てきたもんがそんな下らない記号だなんて。

「……なるほど。賭けだね、君流の」
「……でも、」
「あーはいはい、わかっ」
「恋人になるには、まず、どういう基準なの、」

 ……こんなに、真っ直ぐだったか。真っ直ぐ、直球にぶっ刺し合って、まるで殺すような…心臓の痛さに胸を押し付けた。

 こんなにも、こんなにも。自分勝手で浅ましいけれども。どうしても、欲しいからかもしれない。

 多分、睨むように見たと思う。
 しかしシノは「はは、」と破顔し少し腹を抑え「い、痛い〜!」と軽い。なのに、とても耀いて見えて、

「はーあ、面白。シノミヤキワ」
「………は?」
「え、は?」
「あ、いや」

シノミヤ、キワ。
 彼はふっとラブホテルを見て「基準なんてないけど、」と続けた。

「まぁ、バニラセックス出来たら、かな?」
「…ん?」
「わかんないよねぇ、やってみないと。溶けそうなくらい…延々と甘いやつ。俺はブルーハワイじゃ酔わないよ?」

 ひっひ、と笑ったキワは腕を取りやっぱり自分を引っ張り入れ、手慣れたように受付をした。

 「腹が減った」とデリバリーした弁当に、「篠宮希和」と、まるで見せつけるように名前を書いていた。

 風呂は足も伸ばせない、まるでビジネスホテルのようなボロい場所。

 ねぇ、もっと、せめて知りたいだけなんだよ。光で、満ち足りた未来を。寂しくて、寒くて脅かされないような、静かな場所を。

 暖かい体温に、まだまだ満ち足りないと感じた。
 この人の人生は、何処に向かうのか、と。

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